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   さあ、始めるぞ!(ポーランドにまたフレスコを描きに行く 2015・9)
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今日も青空~。私の中では、ポーランドらしい空ってこれ ♪

     6月16日(火) 作業2日目。今日もいいお天気。
     ここの景色が大好きな私には、もう絶好の仕事日和〜 041.gif



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職人さんたちは、もう日陰用のシートの屋根をつくってくれてました。

     今朝もホテルから、3台の車に分かれて9時には出発。
     現場に着くと、みんなわらわらと各自の持ち場へ。

     それぞれが、今日の作業の手順や予定が頭にあって、黙々、サクサクと動いてる。
     職人さんたちはもう、直射日光で壁が乾くのを防ぐために、日よけ用のシートで屋根を張ってくれてます。

     さあ、私も今日はぐんぐん作業を進めねば。


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壁に直接描く下書き、シノピア(sinopia)。フレスコ画の言葉は、基本的にイタリア語が共通語。

     まずは昨日壁に直接描いたシノピア(sinopia、下書き)を再度チェック。

     いまや屋根用のシートのための足場もあって、遠くからまっすぐ眺められないのが難だけど、曲線の感じや位置など、自分がいいなと
     思うところまで直しながら、自分なりのこの絵の感じ、世界(というと大げさだけど)を頭の中でつくっていきます。

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えへへ、よかった~、まだ新しいカルトーネが残ってた。作業が遅れると、材料も少なくなっちゃうんだよね。

     シノピアができたら、カルトーネ(cartone)の準備。

     カルトーネというのは、イタリア語では「厚紙」という意味ですが、フレスコ画用語では、漆喰の上にシノピアを写し取るための薄め
     の紙のことを言います。たいていは、写真のような大きな紙。場合によっては、ビニールシートなどを使う人も。

     まずはこの紙の一辺に棒をつけ、それを先に描いたシノピアの上において、わずかに透けて見えるシノピアを紙に鉛筆などで写してい
     きます。この時、カルトーネにつけた棒の位置を、壁自体にも印をつけておくことを忘れずに。
     そうしないと、あとで漆喰の上にシノピアを正確に写せなくなってしまいますから。

     一人でも作業しやすい大きさを考えて、画面を3分割して、3枚のカルトーネを作りました。

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なんだこの写真?! 壁にホースで水をかけてるとこを自分で撮ったらこんな(汗)

     カルトーネが用意できたら、まずはよ~く、よ~く、壁に水を染み込ませます。
     程よく湿り気を帯びた壁だと、その上から塗る漆喰がしっかりとくっつくのです。だからSは前日の帰りがけに、壁に水をかけていたわけです。

     ホースで少しずつ、水を何度も丁寧に。
     これにもコツがあって、ただザバザバとかけてるだけじゃ水が壁の表面をすべっていくだけで、壁にまで染み込まないんです。
     何事にも練習と経験が必要だなあ。

     作業プロセスの写真を撮ろうと思ったら、あらこんな↑ことに。
     記録写真を残しておきたいけど、考えてみたら自分の写真って、こうやって作業してると撮れないんですよね。
     だからSは今回、自分の作業場の前に三脚でカメラをセット。
     そうしておけばリモコンで、自分が作業してる後ろ姿だって撮れるわけ。なるほど~!


     みんなも着々と作業が進んでるよう。

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     それにしても、みんなそれぞれ描き方も、スタイルも違うもんだなあ。
     私はみんながふだんどんな絵を描いているのかを知らないので、それぞれの作業風景を見ながら、そこからどんな絵が出てくるのか
     ワクワクします。

     と同時に、初めてではないとはいえ、まだ2回目のフレスコ画。どんな風に画材を扱えば、自分が考えてるような雰囲気を出せるの
     かなあとも考えつつ、みんなの描き方を観察したり、ふだんの作品のことをおしゃべりしてみたり。
     そうやって、また辺りをふらふらしながらも、頭の中では、どんな風に作業を進めようかとフル回転。

     そういう私を見て、(壁の前でじっと壁と語り合うものだという)師匠は「壁に水はやったのか?たくさん、たくさん!だよ」「漆喰は
     もう頼んだのか?予約しておかないとすぐ来てくれないよ」と心配そう(笑)

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左側が4年前にも会った、いつもにこにこしてる親方。右側の人は初めて会ったけど、すごく丁寧な仕事ぶり。

     そうそう! この日から、ポーランド語でコミュニケーションをとろうと、トライ!
     4年前はそんな余裕もなく、ただ会った時に「ジンドブリィ~(こんにちは)」だけだったけど、今回はもうちょっとここの人たちと
     近づきたいなあと思って。

     といっても、
     「プシェプラッシャム(Przepraszam すみません)。イントナコ、プロシェ(intonaco, proszę 漆喰、お願い)」
     だけだけど 006.gif
     イントナコはイタリア語。でも(イタリア人の)師匠となんども仕事をしている職人の親方ならわかってくれるでしょう。ふふふ。


     漆喰以外の用事の時でも、他の仕事をしている職人さんたちのところに行って・・・

      さかな「プシェプラッシャム(Przepraszam すみません)。プロシェ~(proszę お願いします~)」
      (と同時に、さあっ、気持ちを込めて全身を使って、「来てくださ~い!」のパントマイム〜!)
      すると親方が、「⚪︎×△※?」

     もちろん意味はわかんないけど、たいていは「今これやってるから、終わったら行くよ。いいね?」だと思うので、

      さかな「タ~ク、タ~ク(はい、はい)!」(親指をあげて、GOODの合図)
      親方も「タ~ク」003.gif

     よし、会話成立!


     もし私の想像が違っていても、親方の方が私がわかりそうな言葉、「イントナコ(漆喰)?」とか言ってくれるので問題なし。
     それ以上込み入った話の時は、英語とポーランド語ができる通訳役Rに間に入ってもらえばいいしね。

     そんな感じで、この日から、漆喰を塗ってもらうことになりました。


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     湿った壁の上に漆喰を塗り、その漆喰が乾かないうちに水で溶いた顔料の粉で絵を描くのがフレスコ画技法。
     なので、まずはその日の作業分(ジョルナータ)を決めて、そこだけに漆喰を塗ります。

     私はこの日、画面の上半分を終えることにしました。
     でもね、ただ一面にどう筆を運んで色を塗ろうか考えがまとまらないし、途中で(大事な・笑)お昼ご飯もはさみたい。
     だから今日の仕事を2つに分けて、まずは午前中分だけ漆喰を塗ってもらうことに。(そして午後はまた新たに塗ってもらいます)

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ああ、雨降りっぽい~。自分の技術のなさがどういう結果になるか見られたのは良かったかも。

     さて、前回は自分でやった漆喰塗りですが、今回は本職の職人さんたちに塗ってもらうことにしました。
     という理由のひとつがこれ。

     写真をよく見ると、前回描いた絵の空の部分に、青い斜線のようなものが何本も見えるでしょう?
     これは、漆喰の表面をなめらかに塗れなかったから。
     漆喰の表面のザラついたところに、顔料の粉がたまってしまって濃く見えちゃうのです。まるで雨降りの絵みたい015.gif

     だから今回は漆喰塗りはプロにまかせて、その綺麗な表面に、自分の絵を描くことに集中しようと決めました。

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カルトーネを使って、漆喰に絵を写しているA。

     漆喰はシノピアの上に塗られているので、この時点ではシノピアは見えません。ここでさっき用意したカルトーネの登場です。
     カルトーネにつけた棒を、あらかじめつけておいた壁の印に合わせて・・・下書きの絵を、筆のお尻などでギュギュッと力を入れて
     なぞっていきます。
     そうすると、柔らかい漆喰の上に、下書きの線の凹みができて写せるというわけ。
     漆喰に凹みができない方法もありますが、私の今回の絵はシンプルなので、この方法をとりました。

     教会のフレスコ画なども近くで見ると、この下書きを写した線の凹みが見えることがありますよ。
     ご旅行などで、古いフレスコ画を観る機会があったら、一度近くで観てみてください。
     こういう凹みやジョルナータの境目が見えて、何百年も前に描かれたものが、一人の画家にこうやってひと作業ひと作業実際に描か
     れたものなんだと感じられて、ぐっと身近に活き活きと見えてくると思います 001.gif

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     さあ、ここでトラブルが。青がもうないのです。
     みんながいっせいに昨日使い始めて、青い顔料の粉がもうなくなってしまったのです。
     ええ~、青を使いたかったのに~。今からRが町まで買いに行ってくれるそうだけど、戻りは午後だって。

     そこから師匠とちょっと顔料の話になりました。
     色の三原色のうちのひとつ、シアンは壁に定着しないので、フレスコ画には向かないんだそう。

     顔料というのは色の粉。もともとは産地の違う土や鉱物から、今では化学合成されたものなどからできています。
     (粘料や定着剤など様々な要素がありますが)簡単に言うと、顔料を水に溶いたのがフレスコ、アラビアゴムでなら水彩絵の具、麻などの
     油で溶いたら油絵具、ワックスで溶いたらオイルパステル、膠液で溶いたら日本画絵具と、顔料は様々な絵画技法の絵具の大元になる色
     そのものです。

     それを水で溶いて、水分と漆喰内の物質および空気の化学反応でできるガラス質の中に顔料の粒を閉じ込めて定着させるのがフレスコ
     画技法の原理。絵具の歴史の出発点のようなテクニック。
     しかしその後、描きやすさだったり、色の定着や発色の仕方を向上させるためとか、持ち運びの便利さなどの理由から、だんだんと水彩
     絵の具、油絵具などの新しい画材や新しい色の絵具が生まれてきたわけです。
     だからその最もシンプルな技法であるフレスコ画の、水と漆喰だけでは取り込んで定着させられない色というものがあるというわけです。

     この技法の良さを生かすためにも、より豊かな表現をするためにも、顔料それぞれの色の勉強をしないとなあ。ひゃ~ 005.gif005.gif


     まあ、今はともかく描かなくては(汗)

     ということで、まだたくさんある黄土色っぽい黄色で始めることにしました。いや、まあ、たくさんあるからってだけじゃないけどね。
     筆跡をもっと残した方がいいかなあ・・・。でもある筆はこれだし・・・。
     う~ん、右の方は、別の色にだんだん変わっていく感じにしようかなあ。
     これでどうかなあ・・・でもこの方がいいかなあ・・・。

     迷いすぎ~。

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     「そろそろごはんですよ~」
     おおっ、ご飯の時間を知らせるトラクターがきましたよ。

     ちょうどいいや、このジョルナータ分は終わったし。ここで午前中の作業を終わって、ご飯を食べて気分を変えよう。
     そしたら午後には、もっといいアイディアが浮かぶかも~。

     そう思って、私はそそくさと壁の前を離れたのでした 037.gif
by sakanatowani | 2015-11-11 10:27 | フレスコ画 affresco
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