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   ビロードうさぎ

ビロードうさぎ

マージェリィ ウィリアムズ / 童話館出版




     『ビロードうさぎ』を読みました。
     昔々からあるお話しなので、読んだことのある方も多いかも。

     私には子どものころ、大事にしていたおもちゃがありました。
     それは、赤ちゃんぐらいの大きさのピンクのクマの形をして、ちょうどクマのおくるみを着た赤ちゃんのように顔の部分だけ
     塩ビでできた人の顔がついたもの。
     クマなのか、人間なのかもわからないのですが、私の子どものころはこういうおもちゃってよくあったのです。
     どうやって私のところに来たのかは知らないけど、私の最初のお友達。赤ちゃんの時から一緒だった子です。
     私はその子に名前をつけたり、とりたてていつも一緒につれていたわけではないのですが、それはいつも私のベッドの中に
     いて、時々ごっこ遊びに参加したり、いつも近くにいるってことが私にとって安心できる存在でした。

     ところがある朝小学校に出かけようとすると、うちの前に出してあるゴミ袋の上に、この子が乗っているではありませんか。
     私は慌ててその子を抱き、いえに戻って母に「なんで捨てるの?!これは捨てないで!」と一生懸命頼みました。
     もうすごく古ぼけて、ピンクではなくほぼ灰色になっていて、縫い目も裂けて、何度も自分で針と糸で縫ってなおしている
     ものでした。
     それでも私には大事な子でしたから、その突然の母の「捨てる」という思いつきに、ただ驚き、抗議したのです。
     私はその子を自分のベッドに戻し、その子はその日無事、私のベッドでまた寝ることができました。

     それなのにその数日後、今度は学校から帰ってくると、この子が見当たりません。
     大慌てで母に聞くと、私が学校に行っている間に母が捨ててしまったというのです。「汚らしいから捨てたかった」と。
     私が前にあんなに抗議してたのに・・・。
     もちろん私は大泣きです。
     でも私をいちばん苦しめたのは、その数日前にゴミ袋と一緒に捨てられてるあの子の姿。
     助けてあげられなかったという後悔と罪悪感でした。
     その情景とその気持ちは、大人になってもほんの時おりですが私に訪れて、かわいそうなことをしたなという気持ちに
     させていました。

     『ビロードうさぎ』では、お話しの最後の最後に、捨てられてしまったうさぎのところに妖精があらわれて、
     「子どもに心から大切にされたおもちゃは、ほんものになることができるのですよ」
     と、うさぎに魔法をかけ、ビロードうさぎは今度こそ、ほんものの生きたうさぎになるのです。

     よかった。

     そこまで読んだ時、私は心の底からホッとしました。
     もしかしたら、私のあの子も、魔法でほんものになることができたかもしれない。
     そんな気持ちになったのです。
     いい大人がおかしいかもしれませんが。
     
     この本、実は別のバージョンの本を描いたイラストレーターに興味があって、今さらながら読んでみようと思ったのですが、
     あいにく図書館にはこの本しかなくて、この本に巡り会ったのでした。
     こちらのほうがはじめに日本で出版されたものだそうで、翻訳家の石井桃子さんの文章は私の読書の原点でもあるので、
     いい機会だと手に取ったのですが、こんなふうに長年気になっていた気持ちを救ってくれる本になるとは。
     こういうことがあるから、やっぱり絵本ってすごいなあと思うのです。

     このお話しの最後の最後、うさぎはあのぼうやに出会うのです。
     そしてもう大きくなったあのぼうやは、「やあ、きみはぼくが昔持っていたうさぎにそっくりだなあ」って言うんですよ。

     私のあのクマの子も、いつか私と出会うのでしょうか。
     そのときは、笑って話したいなあと思うのです。

     『ビロードうさぎ』。大人になっても、いろんなことを感じさせてくれるお話しです。
     機会があったら、一度ゆっくり読んでみてください。
by sakanatowani | 2014-12-06 11:19 | 映画、本 film&book
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