カテゴリ:フレスコ画 affresco( 37 )
   お疲れ様~!(ポーランドにまたフレスコを描きに行く 2015・17)
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     師匠の個展のオープニングのあと、みんなでフレスコ画の現場に戻ったら、さあ、お疲れ様会の準備です。
     車で着いた途端、おばちゃんたちに呼び止められて、みんなで一緒にお手伝い。

     「みんな〜、小屋にあるものを持ってきてね~」
     師匠だってお手伝いに参加です。

     トラクターの後ろのワゴンには・・・
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     た~っくさんの、おいしいもののお皿がぎっしり乗ってますよ~。

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     さあ、手にごちそうのお皿を持ったら、しゅっぱ~つ!

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     パン焼き小屋からいつもご飯を食べてるところまで、トラクターを先頭に、ごちそう持ってパレードで~す♪

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     日も傾いてきましたよ。
     途中、右手に見えるのが、4年前の航空写真爆風事件以来、おつきあいがなくなってしまったお宅・・・おばちゃ〜ん、今回も会いたかったのに・・・


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     食事場所の前では、火を起こし始めました。


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     その間、私は友人Rと、私の左の壁で描いていたR、Asと一緒に、みんなの絵をゆっくり見に行くことに。

     みんなこの5日間、それぞれがけっこう自分の絵にかかりきりで、他の人の絵をほとんど見てないんですよね。


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     RやAsの絵も、私の壁も、西日が当たって木の影がきれい。
     誰とはなしに影絵を始めちゃって、みんなで一緒に記念写真。私の好きな写真のひとつです。



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     本当にここは気持ちがいい。
     別に感傷的になるつもりはないけれど、こうやって、またあらためてしみじみ辺りの景色を眺めてみたりして。



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     さあ、もうテーブルいっぱいに食事の用意もできましたよ~。

     でも乾杯はもうちょっと待って。

     母屋の方から何かが近づいてきましたよ・・・


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     ふ~っふっふっふ・・・
     現れたのは・・・・・・大きな鎌を持った・・・・・・死神?!

     ああ、ホントこの人(オーナーS)は、サービス精神旺盛だなあ。
     もちろんみんないっせいに彼を取り囲んで、写真撮影ターイム!

     そしてオーナーSの乾杯の音頭で、お疲れ様会の始まり〜。

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     数人ずつで固まって、冗談言ったり、仕事の話、アートの話、取り止めのない話をして。


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     なんとなく今まであんまり話をしなかった人と、この機会にちょっと話したり。


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     連絡先の交換をしたり。
     それで初めて(今更ながら)相手が普段はどんな仕事をしてるのか知ったり。


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     この5日間、それぞれが自分のペースで仕事を進めて、自分の仕事の都合にいい時間にそれぞれ食事をしてって、けっこうみんなバラバラで
     過ごしてきたけど、でもやっぱり「仲間」って感じがする人たち。

     絵を描く時ってたいていひとりだけど、そうやって自分の仕事にマイペースで集中して、でも周りを見れば気持ちがいい仲間がいて。
     そういう距離感がすごく心地よかった。


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     今までほとんど話をする機会がなかったNが、ちょっと照れながら「連絡先を交換しよう?」と近づいてきた。
     彼女はずっと旦那さんと一緒に仕事に専念しているようだったので、あえて邪魔しないようにと話しかけたりしなかったのだけど、
     実は彼女は、私が思ってたよりもずっとずっと、みんなと仲良くしたかったのかな、なんて考えた。
 

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     ホテルに戻ってから、みんなでまたおしゃべり。


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     明日からはみんなまたそれぞれの国に帰って、それぞれの仕事が始まるのだけど、でもソーシャルネットワークだって、メールだってあるから、
     みんなと連絡を取り続けることだって、また会う機会をつくることだってできるんだよね、なんて話す。

     そういう意味で、本当に私たちは幸せな時代にいるんだなあ。



     そんな風にして、私たちのフレスコ・ラビリンスのプロジェクトは終わりました。
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by sakanatowani | 2015-12-10 16:48 | フレスコ画 affresco | Comments(4)
   みんなの絵ができました〜!(ポーランドにまたフレスコを描きに行く 2015・16)
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     さあ、そろそろみんなの絵も終わり。
     どんどん足場がかたずけられます。オーナーのお客さんもチラホラ。
     出来上がったみんなのフレスコ画を見て回ってます。



     いろんなところから集まって、同じ場所でそれぞれの絵を描く。
     楽しいなあ、こういうプロジェクト。
     描いてる間はみんな自分のことに集中してバラバラだけど、集まればなんだかすぐにいろんなことを話せる人たち。
     みんなそれぞれ、普段は自分の国で活動している人たち。
     お互いに普段の仕事を知らないから、それぞれが持ってきた小さな作品集とかを見せあって、「普段のその人」を知るのも面白い。

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みんなのフレスコもできました。モザイクがけでしか紹介できないのが残念です~。

     Aはいつも、幾何学的な模様を室内の壁に描く仕事をしているそうだけど、Aの人柄を(1週間弱だけど)知ってから見る彼女のフレスコ
     画は、まさに「彼女の、彼女らしい」仕事だってすごくわかる。
     普段は風景画ばかり描いているというSは、「今描いてるのは、どちらかといえば自分の得意な絵柄じゃないんだよ」って言うけど、見せ
     てもらったいつも描いてる風景画に使われてるような、のびのびした筆使いが気持ちいい。

     Frが師匠と一緒に描いているとき驚いたのは、地の色とは全く違った濃い色を、大胆に躊躇なく描いていくこと。私はそういうのは怖く
     てなかなかできないのだ。
     「美大の教授に『線を引くときは躊躇しちゃいけない』っていつも言われてたから」って彼は笑ってたけど、それは彼が物の影の形を、
     濃さの段階別に瞬時に捉えられる人だからだと思うんだ。それを聞いた師匠が「彼は彫刻家だからね。だから物を立体に見られるんだ。
     本当にすごいよ。実は私はそれができないんだ。だからこういう絵を描いてるんだよ」って。
     師匠の言葉を聞いて、内心私はホッとしてしまった。仲間だ~!って思ったから(笑)。私も物の立体感を平面に描くのが苦手なのだ。
     そうなんです。実はFrは彫刻家。
     彫刻家の目ってすごいなあ!! 同じものを見ていても、私とは違うふうに見えてるんだなあ。

     NとVのカップルが描いたのは、きちんと絵を勉強してきた人の自信があるしっかりした仕事という感じ。
     思わず「きれい!」と言ったらVに「当たり前だよ。プロだからね」と無表情に言われてしまった。あ、そりゃそうだ。ごめんなさ〜い。
     実はFrも同じことを言ってしまったらしく、あとでふたりで「プロフェッショナルの中に、俺たちふたりだけおばかさんだね」って笑っ
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     建築家のNと画家のV。モルドバ出身の彼らは、モルドバとルーマニア両国の身分証明書を持っているそうだ。
     「私たちの住む場所柄『できるかな?』って試してみたら、もらえたのよ〜」Nがそう嬉しそうに話してた。
     自分の国の形が変わる。宗教や文化が同じ、違う。変えたい、守りたい、変えようとする人がいる。そういう歴史をもつ国に住む人は、
     自分のアイデンティティというものを常に意識して日々生きている。自分がやることの意味に対する意識や自信も違う。ただおしゃべり
     するだけでも、その意識の違いを端々に感じます。
     自分のバックボーンや日常とは違う人と共通の興味を話題に話すだけでも、自分の知らなかった世界が見えてきて、世界のことも、自分
     のことも、今までは違うベクトルで見るきっかけになるなあ。

     Anの絵は、メキシコ人らしいモチーフと強い色使い。こういう自分には絶対描けない絵って、私にはすごく魅力的。
     そして一足先に次のプロジェクトに旅立ってしまったG。シュールレアリズムの彼の絵はすごく面白い。共通の言葉があったら、もっと
     もっといっぱい話して聞きたいことが山のようにあったのになあ。

     「どれどれ。君の絵を見に行こうか」師匠が私を促します。
     「これは、ここに来て嬉しい気持ちを描いたもので・・・」絵の説明をすると、すごく気に入ってもらえたよう。
     「すばらしいね、そういうものを、こんな形でかけるなんて!」
     そう褒めてもらえました。
     やっぱり嬉しいね。絵を褒められると♪ それに、もしかしたら誰かに絵を褒められるのは、10数年前に日本を出てから初めてかも♡


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     さあ、みんなで記念撮影♪

     今日はこれからみんなであるところに出かけます。だから今日は早じまい。
     オーナーの家で、それぞれ身支度を整えましょう。

     それで気づいたんだけど、こういう時って、男性の方が熱心で、おめかし時間がかかるのね。

     Aはスカートも持ってきたからとそれに着替え、ささっと口紅をつけるぐらい。
     私はといえば、作業着しか持ってこなかったから、せめてもと、日本からの移動中に着ていた作業着じゃない唯一のパンツに着替え、薄
     く口紅を塗りっ。おしまい。

     一方、男性陣。
     Sは作業着からこざっぱりとした普段着に。「こんな服しか持って来てないんだよなあ」なんて心配そう。
     「はい、はい。大丈夫。あなたはいつでもかっこいいよ」
     な~んて励まして(からかって?)いる横で、いつの間にかさっさとシャワーを浴びてさっぱりしたRは、まさにお出かけ着にちゃっかり
     着替え髪をなでつけ、コロンまで香らせている。
     「ああ、全く。アーティストだと、男性の方が美意識が高いのかしらん」「ね〜015.gif
     Aと私は彼らをからかいながらぼやいてみせる。

     「さあ、もう出かけなきゃ、遅れちゃう。支度できた?」
     オーナーの奥さんが様子を見に来る。せかせかと、早く行きたそう。

     さあ、あとは・・・オーナーS。なんとまだシャワーに入っておめかし中・・・
     奥さんは扉の外から何度か彼を急かすように声をかけ、「さ、行きましょ。あの人はいつもこうなのよ」なんて、私たちを促しつつ、先に
     スタスタ駐車場に向かって歩き出す。

     ああ、本当に男性というものは、支度に時間がかかるのだ・・・044.gif

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     さて、みんなで行ったのは、車で30分ぐらいの町であった師匠の個展。
     会場は、この町の昔のお城、今の博物館になっているところ。
     お城のグルリを囲む城壁の大きな門をくぐると、その中庭には罪人を捕まえておくんだか、そのあと首をはねるんだかの↑みたいなの
     もあって・・・。
     その小さなお城の一角が、師匠の個展会場でした。

     多分毎年ポーランドに来るたびに、こうやってどこかで個展をしているのでしょう。会場はファンの方でいっぱい。
     師匠の絵は、誰もが思わずにっこりしてしまうもの。
     ポーランドでも、こんなにたくさんの人が好きなんだね。
     もうね、たっくさんの、特に女性ファンがいっぱいで、みんなが師匠を写真を撮ったりサインを欲しがったり。
     師匠はそういうの恥ずかしいみたいで逃げてたけどね。ふふふ。


     さあ、個展のあとは、再度フレスコ画の現場に戻って、パーティですよ〜!
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by sakanatowani | 2015-12-03 16:43 | フレスコ画 affresco | Comments(6)
   修復を終わらせるよ(ポーランドにまたフレスコを描きに行く 2015・15)
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今日も曇りで、結構肌寒い。

     6月19日(金) 作業5日目、最終日。

     今日でとうとうこのプロジェクトも最終日。
     修復はもちろん終わらせるけど、できればその周りのところに、新しいものを描きたいなあ。
     だって初日に「あれじゃあ切り取られた写真みたいだよ」って師匠に言われちゃったんだもん。まあ、ほんと、そうなんだよね。
     あの時は、考えてああしたんだし、あれで精一杯だったんだけど、今なら何か描き加えられるんだと思うんだ。
     でも何を?

     朝食の席でその話をしていたら、Sがいいヒントをくれた。
     そうだ、そうしよ~! あれならすぐにでも描ける。
     まあ、でもまずは、あの修復を終えないと。

     今日もみんなで車に分かれて現場に出発。
     誰がどの車に乗るかは、あらかじめドライバー同士で決めてるみたい。出かけるたびに毎回ドライバーから指名されるのだ。どういう基準?
     最近、私とSとAはいつも一緒の車。
     そしてなぜかこの3人が一緒になると、もうつまらない些細なことでもおかしくて、そこからまた冗談が次々と出てきて、ゲラゲラ、ゲラゲラ、
     お腹を抱えて笑い通しになる。疲れすぎてナチュラル・ハイ?
     すごく楽しい組み合わせ。

     そうそう、このフレスコの現場近くのおうちで、なんとラクダを飼ってるんだって!
     毎朝通るたびにみんなで目を凝らして、何回かは見られたよ。
     こんな寒いところで、ラクダは元気にしていられるのかなあ。


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     さて、今日はさっさと修復を終わらせないとね。
     だから朝いちばんで職人さんのところに飛んで行き、すぐに漆喰を塗ってもらいます。
     ・・・ってジェスチャーで頼んで、待ち時間をまたぶらぶらしてたら、職人さんがやってきた。
     何か聞いてるんだけど、私にはわからない。
     すると、今度は通訳Rを連れてきた。。

     「これ、両方いっぺんに塗っちゃっていいの?って聞いてるよ」
     ああ、そうか!午前中のジョルナータの予定を聞いてくれてるんだね。今までいつも、1度に1か所だけ塗ってもらってたものね。
     「うん、大丈夫。両方一緒にお願いします~」

     ってやってたら、師匠が様子を見に来たよ。
     「ありゃ、(古い漆喰を)顔のところも削っちゃったのか。そういう細かい形だと、ここの職人たちはうまく塗れないよ」という。
     (ふふふ、大丈夫なんですよ、この人なら)って思っているうちに、職人さんが顔を塗り終わる。

     「うわ~。すばらしいね。こんなにいい仕事、ここで見たことがないよ!!」
     師匠もすごくびっくりしてる。
     この職人さん、本当に上手で丁寧。フレスコ画がどういう手順で進めていくかもわかってくれているから、こちらもすごく安心できる。
     今回は自分で漆喰を塗らず、お任せして本当によかったな。

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ここの足場はこんなにコンパクト。

     新しく漆喰を塗った部分は、昨日まで描いていた壁と同じ要領。
     4年前のことをちょっと思い出しながら、楽しく再び描いていきます。

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     今日もおばちゃんたちが、ヨーグルトを持ってきてくれたよ。絵の具を入れてる容器と間違えないように気をつけなくちゃ。


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     新たに漆喰を塗らないで上から色を重ねていく部分は、汚れの色をカバーするために、まず水に石灰を多めに溶いた上澄みのラッテ・ディ・
     カルチョ(latte di calcio 直訳で石灰のミルク)で下地作り。
     こうすれば、透明感のあるフレスコ画の技法でも、下の汚れの色が目立ちません。

     この上から新たに、今度はラッテ・ディ・カルチョよりも石灰を少なめに溶いた上澄みのアックア・ディ・カルチョ(acqua di calcio 直
     訳で石灰の水)に顔料を溶いて絵を描いていきます。
     こうやって、すでに乾いた絵の上から描くときは、新しい顔料を包み込んで定着させるために、通常のフレスコ画の原理である湿った漆喰
     中の石灰の定着剤の代わりに、顔料を直に溶く水の中の石灰を使うわけです。


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     さあ、そんなことをしていたら、いつの間にかお昼ご飯の時間。
     今日のメニューは、野菜いっぱい具沢山スープと、ミラネーゼみたいなカツレツに茹でたジャガイモとサラダの付け合わせ。

     珍しく側に座った師匠が「イタリアでは”どんなものでもミネストラに”っていうけど、ポーランドは”どんなものでもスープに”だね」って
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     ふふふ、イタリア人の師匠らしい。
     私には、ミネストラもスープもそんなに違いがないように思えるんだけど・・・。でも考えてみたら、イタリア語にもスープに当たるズッパ
     (zuppa)っていう言葉がある。
     調べてみたらミネストラは、お米や麦、小さなパスタなどを入れたスープのことなんだって。ちなみにミネストローネは、野菜などがたっぷり入って、小
      さいパスタやお米なども一緒になったスープ。
今まであんまり考えないで2つの言葉を使ってたなあ。

     私が(似たようなものだと)何も考えないで食べていたスープでも、イタリア人の師匠には、これはスープ、あれはミネストラって、当たり
     前に全く違うものなんだ。面白いね。
     日本人にとっての、けんちん汁と豚汁の関係って感じかなあ。あ、でも、けんちん汁は味噌味じゃないか。何かあるかな?日本食でこの関係に似たもの。


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     お昼ご飯で満たされたお腹を抱え、落ち着いて最後のチェック。

     顔がね、なんだか前と違う・・・。今回はカルトーネを作らなかったからね。表情がなんとなく違うのだ。
     でもまあ、これは2015年版の表情ってことで。適当すぎ? でも今回もちゃんと表情のことは考えたよ。今の気持ちが表情にも反映するのかも。
     よし、これでいいかな。

     う~んそれにしても、稚拙な絵だなあ。もうちょっとなんとかできなかったのかしらん。
     ああもできる。こうもできる。いろんなアイディアが浮かんでくる。
     だけどあの時は、あの時なりの自分の精一杯を描いたんだよね。
     今こう思うのは、この4年で自分が成長したからだと思おう。これは4年前の私の記念品。


     ほんとはこの周りに新たに描き足して、昔の私と今の私の合作をつくりたかったんだけど・・・でも今日はどうやら時間切れ。
     お昼過ぎ。今日はもう店じまいにしないといけないみたい。
     残念。
     もう一度、ここに来られたら描き足したいなあ。

     この4年続けられてきたこのプロジェクトは、今年で最後だそう。でも、個人的にまたここに来て、さらに描き足せるようにできたらいい。ね。

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by sakanatowani | 2015-11-29 11:48 | フレスコ画 affresco | Comments(6)
   漆喰をはがし終わって下準備完了(ポーランドにまたフレスコを描きに行く 2015・14)
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左がイタリア式、右がメキシコ式のジョルナータの分け方。

     さてここで、初日にちょっと書いたイタリアのフレスコ画とメキシコのムラーレス(壁絵)の違いを。

     やっぱり決定的な違いは、ジョルナータの作り方。
     イタリア式は、今回私がやったように、各絵柄の色の境目でジョルナータを仕切ります。
     一方、メキシコのムラーレスは、基本的にはジョルナータは四角。絵柄に合わせるとしても、四角に切ると、1つの色が中途半端にほんの
     ちょっとだけ別のジョルナータに分かれちゃうというときぐらい。
     4年前に私に描き方を教えてくれたJは、私にはイタリア式で教えてくれてたんだなあ。
     でも彼は自分の国の伝統画法を守っていくんだな。だから自分のには、ここでもメキシコ式でジョルナータを作ってる。

     それからたぶん、色の塗り方も違うんじゃないかな、という気がします。
     初めは「そんなに違うものなのかな~」って思っていたけれど、今回自分で描きながら、また師匠の絵を見ながら、Jの作品とは、なんと
     なく色の出方が違うなと感じたのだ。
     師匠の絵の方が、絵の具の透明感を生かした描き方に思えるのだ。メキシコのものは、ギラギラと照りつく太陽にも負けない力強い描写。
     イタリアの日差しとメキシコの日差しの違い。それが絵柄や色使いだけでなく色の塗り方にも影響してるんだろうなって気がします。

     もっともっと師匠とフレスコ画を描いて、それからメキシコでフレスコ画を描いているJと一緒に絵を描いたら、その違いがもっといろいろ
     細かいところまでわかるんだろうなあ。
     またJと一緒にフレスコ画を描きたいなと思います。


     みんなの絵も、着々と進んでますよ~。

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     さて、修復作業に戻りましょう。

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     修復は、基本的には汚れをできるだけとった後、顔料を水でなく石灰水に溶かして、それを絵の具として描き直します。
     0から描くときは、漆喰中の石灰分が顔料を定着させてくれるのですが、描き終わって乾いてしまったら、その漆喰の中の石灰はもう、
     顔料を定着させる力がありません。だから上から重ねて描きたいときは、新たな定着剤を補充してあげなくてはいけません。それが今
     回、顔料を溶くのに使う石灰水。つまり、顔料を石灰水で溶くことで、簡易定着剤入り絵の具をつくるというわけです。

     一方、範囲が広くてやり直しが楽なところや汚れが特にひどくて、上から描いてもカバーできそうにないところには、古い漆喰から剥が
     して0からやり直します。
     今回は、スカートと顔の部分は0から、そのほかの部分は石灰水で溶いた絵の具で上から描く方法に決めました。
     写真左上、顔の部分の漆喰をはがしたところ。下から壁に直に描いた前回の下書き(シノピア)が出てきましたよ。

     う~ん、この魚の部分、絵の具が剥落しちゃった部分はどうしたんだろう。
     顔料が多すぎたのか、それとも描いたとき、もう漆喰が乾きすぎてたのか。
     こうやって、失敗しながらだんだんわかってくるんだろうな。

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     今日は削るところを全部終わらせるだけのつもりだから、ちょっとのんびり。

     全部を、ハンマーでトントン叩いて剥がしたら、あとは明日のために、剥がした部分に水をたっぷりかけて、壁に湿り気を吸わせておきます。
     さあ、これで今日はおしまい。

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     みんなも今日は早じまいの人が多くて、いつも私たちの送り迎えをしてくれてるオーナーの奥さんは、一足先にみんなを乗せて行っ
     ちゃった。
     残されたのは、私とAとR、自分の車で来ているオランダ・フレスコ学校組の3人。

     これまでずっと、このプロジェクトのアシスタント役をしていたRは、この午後から絵を描き始めました。
     だから運転手でもあるRが今日の作業を終わるまで、私とA、そして車は持ってるけど道案内役が必要なオランダ組は待たなくちゃ。

     残念ながら今日は曇りだけど、こうやってゆっくりあたりを歩いて見られるのは嬉しいな。
     けっこういろんな植物があって、それがまたイタリアでも日本でも見たことがないものもあるから楽しいです。


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     いつもより遅い時間の帰り道、こんなきれいな空が見られたよ。



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     私がホテルに帰り着いたときには、もうみんな夕食を終えたあと。これしか残ってなかったよ~(泣)
     夕飯はいつも、ハムに、きゅうりとトマトのサラダ、市販の甘くないスプレッド類とパン。
     みんなはさっさと夕食を食べて、今夜は街に出かけるみたい。Aは友人との夕食に飛んでった。

     私は今夜はひとり、ゆっくりと夕食を食べてホテルでお留守番。
     本当は、みんなも盛んに誘ってくれたし、私も一緒に出かけたかったけど、もうくったくたで動けない。
     というのも、実はポーランドに来て以来、ほとんど眠れていないのです。毎晩3、4時間ぐらいかな。時差ぼけかもね~。
     そんなわけで、私はひとり、ボ~ッとしながら夕ご飯。それもまたよし。

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     実はこの晩、私は新しい部屋に移ることになりました。

     今日まで私とCだけは相部屋だったのです。で、どうやらCが、ほかの人みたいにひとり部屋にして欲しいと言ってたみたい。
     実は私とC、あんまり相性が良くなくて、ちょっとぎくしゃくし始めてたんです。
     もちろんケンカなんかはしないけど、眠れない私が朝早くにネット環境を得るために部屋をそっと出たりする音も迷惑だっただろうし。
     私たちの部屋は端っこで、廊下の向こう端まで行かないとネットが使えなかったの。
     私も、自分の不幸話ばかりを延々とするCに、「ああ、いたいた、こういう子。イタリアの女の子ってこうだったなあ」と、始めは苦笑
     してたけど、やっぱり疲れてきちゃってたし。
     はは。お互い様だね。険悪になる前に部屋が変わって、ちょうどよかった。

     そんなわけで、私はオーナーの事務所があるサイドの一室、一足先に次のプロジェクトのために出発したGが今まで泊まっていた部屋に
     お引越し。
     ここはGが来たときにいつも泊まる部屋らしい。つまり、お友達用の部屋なのね。師匠もホテルの一室が、師匠専用の部屋になってるみたいです。
     壁いっぱいに、Gや師匠、そのほかの画家の、オーナーのコレクションで埋まってるんですよ。
     それをじっくり見ているだけで、ちょっとしたギャラリーに来たみたい。


     その晩はひとりでぼんやり過ごすはずが、私がまだのろのろと食堂でひとり夕食を食べているうちに早めに帰って来たAと、みんなとは
     出かけずにひとりでゆっくり部屋をかたずけてたCと一緒に、3人で遅くまでおしゃべりして、思いがけなく楽しく過ごしたのでした。
     
     
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by sakanatowani | 2015-11-27 14:08 | フレスコ画 affresco | Comments(4)
   完成、そして修復開始(ポーランドにまたフレスコを描きに行く 2015・13)
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     6月18日(木) 作業4日目。
     今日は最後のジョルナータを描いて、そのあと本格的に修復作業を始めよう。

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     昨日から師匠が削り始めてくれていた部分を、もう一方の絵の漆喰塗りの待ち時間に始めます。
     ハンマーで、削る部分をトントントントン・・・するとボロボロと、4年前に塗った漆喰が剥がれてくるのです。

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     トントントン、トントントン・・・トントントン、トントントン・・・いいなあ、この場所。静かなひとりだ。でも騒音を出してるのは私・・・
     みんなの話し声も遠い場所で、ひとりで黙々と単純作業をすすめるのは心地いい。

     トントントン、トントントン・・・トントントン、トントントン・・・


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     今日のジョルナータの漆喰塗りの様子を見に行くと、今日は初めての若い職人さん。

     ああ、この人は、フレスコ画の漆喰塗り初めてなんだろうなあ。表面がザラザラだし、ああ~、昨日のジョルナータにそんなに漆喰を
     かぶせちゃわないで~。消えちゃう~。
     途中で親方が様子を見に来て、指導して修正を指示。ああ、でも、昨日描いたとこ、削っちゃってるよ〜。

     今まで上手な人に当たってきたから、ちょっと残念。
     だけど今日描く部分なら点描だから、表面のがたつきも気にならないはず。削られちゃった部分は、今日ちょっとごまかしながら描き
     足せるかな。


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     さあ、この絵の最後のジョルナータ。順調にサクサク進んでるなあ。

     この部分は、昨日描いたいちばん左部分と同じ色、筆使いで描くところ。
     昨日描いたところを見ると、今朝は少し乾いて、色が昨日に比べて随分暗くなっている。ふ~ん、こんなに暗くなるんだな。
     それを見越して、今日描く部分の色をつくる。まあ、そんなに厳密じゃないんだけど。

     点々、点々・・・今日も点描。
     すぐそこの草むらと、その中に咲くちっちゃな花を思い浮かべてね。

     点々、点々・・・点々、点々・・・



     ああ~!!!

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     しまった! うっかり指が漆喰を引っ掻いちゃったぁ~!(泣)
     ひ~ 008.gif 人のこと、文句言ってる場合じゃないよなあ。

     ・・・まあ、しょうがない。
     指で表面をちょっとならして・・・その上から点描して隠しちゃおう。


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     最後にサインも入れて・・・さあ、できた!

     ふふふ、いろいろ迷ったりもしたけど、できたな~。
     突然描くことになって始めた絵だけど、今の気持ち、まあまあうまく描けたんじゃないかな。

     ここにまた来られて、そしてみんなに会って、いろんな人がここで創作する嬉しさと、そのエネルギーがあふれて飛んでさらに広がっていく。
     そんな絵です。



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     私の壁は、ちょうど樹の横。
     だからこんな緑をすかして、他の壁が見えていい感じ。
     みんなも作業も、どんどん終盤に入ってるなあ。

     ひとつの絵を完成させたという感慨も特になく、次なる作業をさっさとやらなくちゃ。
     お昼までの間、また修復する絵をハンマーでたたく作業に戻ります。




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     さあお昼ご飯。今日はテーブルで食べますよ~。

     まずはついつい、バスケットに入ったイチゴに手が伸びま~す。おいし~い!
     そして今日のメニューは、ソーセージの入ったジュレック (Żurek)。
     ジュレックというのは、ライ麦を発酵させたものからつくる、ちょっと酸味のあるスープ。だ~い好き 016.gif
     昨日パン焼き釜で焼いたパンもありますよ。
     それに、今日はイチゴのジュースとルバーブのと2種類。


     そういえば、私が昨日食べられなかった昨日のお昼ごはん、メインはいちごのパスタだったんだって。
     いちごのパスタ?!って、ちょっとびっくり。
     ショートパスタを、つぶしたいちごであえてあるそう。

     ふ~ん、面白いなあって思って、帰って来てから調べていたら、ポーランドでは夏のパスタとしてフルーツと組み合わせて食べることが
     よくあるらしい。
     へ~、食べてみたかったなあ。

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     お腹もいっぱいになって、またのんびり景色を見ながら、壁の方に戻ります。

     今日はちょっと曇ってるね。
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by sakanatowani | 2015-11-23 09:42 | フレスコ画 affresco | Comments(4)
   黙々と・・・(ポーランドにまたフレスコを描きに行く 2015・12)
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Sがこっそり写真を撮りに来たよ~。

     フレスコだって、いつものようにただ楽しんで描けばいいんだ。迷いことないんだな。
     そこまでわかったら、あとはただひたすら描くのみ。

     実はこの絵は、私の「ここにまた来られて、こういう人たちと描けて嬉し~い!」という気持ちをあらわしたもの。
     だから楽しい気持ちで描かなくちゃねえ。

     さっきAのところに遊びに行ったら、「フレスコ画は透明感があるのが特徴。重ねるとすごく綺麗な色もあるんだよ」って教えてくれた。
     本当に効果的にこういう特長を活かすにはそれなりの知識と経験が必要だけど、今の私なりに今日の部分で試してみよう。
     そして帰ったら、顔料の勉強を始めよう。

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     そこに、おばちゃんたちとRが、自家製ヨーグルトを持ってきてくれました。
     さらっとしていて、酸味も優しい、ヨーグルト・ドリンクです。
     これもパンと一緒に、昨日から用意してくれてたみたい。

     至れり尽くせり。嬉しいなあ。

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     さあ、そろそろお昼の時間。

     とはいえ今日は、ゆっくりお昼なんて食べてる時間はないなあ。この大きな部分は一気にやらなくちゃ。
     テーブルでゆっくり食べてたら、せっかく塗ってもらった漆喰が乾いちゃう。

     だけどお昼を抜いたらエネルギー切れで集中力なくなるだろうなあ。
     よし、せめてスープだけでも・・・。

     ささっとスープだけ食事小屋にもらいに行って、自分の壁の前で食べましょう。
     今日のスープは、トマトスープかな。白っぽく濁ってるところを見ると、乳製品も入ってるのかも。
     おいしい~。

     「壁の前でスープ・・・」
     後ろで師匠が呆れたようにつぶやいてるのが聞こえるけど・・・(「こぼして壁を汚したらどうするんだ」って思ってるかな~?)と思った
     けど、気にしない、気にしない。

     食べたらすぐに仕事に戻る。
     黙々、黙々、黙々、黙々・・・ひたすら、ひたすら没頭する。

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     「何か欲しいものがある人~」
     Rがみんなのところを回ってる声がした。

     「は~い。お腹が空きました~!」019.gif

     そしたらね、何かを塗ったパンを持ってきてくれたよ。
     ありがと~。そうか、今日はこのパンがあったんだっけ~!

     聞いたら、この塗られたもの、スマレッツ(smalec)っていうんだって。写真の矢印のもの
     後で調べたら、豚肉のリエットのようなもので、玉ねぎと三枚肉とラードとスパイスを煮て冷ましたもの。
     パンにスマレッツを塗って、そこに生の玉ねぎのスライスを置いて食べるそう。

     う~ん、ガッツーンと脂だ! で、おいし~い!
     ポーランドって冬は寒いところだから、こういう脂や肉をたくさん食べるんだろうなあ。
     昔々から、狩をして捕ったり飼っていたものをこうやって、何もかも残さずに食べてきたんだろうなあ・・・なんて思った。

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     絵のメイン部分は動きを出したいなあ。
     黄色っぽい、いろんな色の光が集まったような色にしよう。
     いつものように、いろんな色をあちこちに散りばめよう。
     背景の緑の部分はここの麦畑。もっとコントラストがついたほうがいいなあ。

     自分のいつものやり方で、って決まったら、色の組み合わせや筆使いのこと、考えやすいなあ。

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     う~ん、だいたいこんな感じかなあ。

     でももうちょっと・・・う~ん・・・一度、ここをちょっと離れて頭を切り替えてから、もう一度見よう。
     やっぱりお腹も空いてるしね。
     おやつでも食べに行こ~っと。

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     と、楽しみに来たのに、今日はおやつがあんまり残ってな~い(泣)

     紅茶を入れて、大きなウエハースにはちみつをつけたり、お手製りんごペーストをつけたり。
     もぐもぐ、もぐもぐ・・・食べてたら、逆にどんどんお腹がすいてきちゃったなあ。

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     さあ、戻って、最後のチェック。
     コントラストをしっかりつけて、白っぽい部分はこれでいいかなあ。
     そういえば「白っていうのは、石灰そのものを使うんだよ」って、4年前にJが教えてくれたんだよなあ。なんて思い出す。

     フレスコ画の色って、乾くと色が変わるもの。でもこれは経験からしか、どの程度どう変わるかがわからない。
     ましてこんな白っぽい色、使ったことないしねえ。
     でも考えていても、今、乾いたときの色がわかるわけじゃない。

     よし、できた~。ことにしよう。

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     さあ、今日も1日終わりました。

     描いたぞ~! 満・足、満・足 003.gif
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by sakanatowani | 2015-11-20 15:23 | フレスコ画 affresco | Comments(2)
   パンを焼くよ~(ポーランドにまたフレスコを描きに行く 2015・11)
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     6月17日(水) 作業3日目。
     朝、昨日描いた壁の前に立って眺めてみる。

     ・・・やだ。なんか変・・・。気にいらな~い。気に入らないよ~!007.gif

     黄土色と青の境目、なんでもっと左にしなかったんだろう。
     画面の真ん中からぱつって分かれてるみたいじゃない? 
     こんなのやだ~。なんで昨日、気がつかなかったんだろう。


     う~ん・・・

     ・・・でもさ、もう描き直せない。フレスコ画は、修正がきかないんだよね。
     ・・・じゃあ・・・しょうがないか!

     そうだよね。描いちゃったものはしょうがない。
     描いちゃったものはしょうがないんだからさ。今日の分をよく描くしかないよね!045.gif


     ・・・な〜んて、しばし壁の前でひとりぶつぶつ言いながら、「よし!」と気合いを入れる。
     今日は下半分の左部分を描く予定。絵のメイン部分でもあるし、面積的にも大きいから頑張ろう!


     そうやって、気に入らない部分でがっくりした気持ちを入れ替えていたら、背後からCにアドバイスする師匠の声が聞こえてきた。
     「ほら、さかなが言ってるように『描いちゃったものはしょうがない』んだから、先に進みなさい。あとから描くもので、新たな
     全体のバランスも見つけられるかもしれないし」
     うはは、ありゃ、独り言、聞かれてた011.gif

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     今日もゼスチャーたっぷりポーランド語会話で漆喰塗りを予約して、職人さんが来たら、今日塗ってもらう部分を指示します。

     ふふふ。彼らも、私のこのジェスチャー会話に慣れてくれてる。
     こんなふうでもコミュニケーションが取れるのは嬉しいなあ。


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     塗ってもらっている間にまたぶらぶらしていると、師匠が、修復すべき私の以前の絵を削ってくれてる。

     近づいて、修復の仕方を教えてもらう。
     ふむふむ、やり方は2つ。汚れの度合いによって、やり方を変えるんだ。なるほど〜。
     説明を受けて、明日から修復作業を始めることを伝えます。


     そんなことしていたら、オーナーSが「ジンドブレ~(こんにちは)♪ 041.gif」と上機嫌でやってきて、
     「さかな、君に見せたいものがあるんだよ~♪ 師匠、あなたも一緒に!」
     いきなり私の手をとって、ルン♪ルン♪とパン焼き小屋の方に歩き出す。

     「どうしてこの人たちは、こうもいろんなことをやりたがるのかなあ。作業が途切れちゃう。フレスコ画っていうのは、食事だって、
     抜きか壁の前でパニーノだけってものなんだよ・・・」
     小声でぼやきながら、しぶしぶ私たちの後を歩く師匠。

     この人は、本当に作業だけに没頭したい人なんだなあ。
     こんな人、仕事中はおしゃべりばかりっていう人も多いイタリアでは会ったことないなあ。
     そんなことを思いながら、ちょうど待ち時間だった私は、ちゃっかりいそいそとオーナーに手を引かれて歩き出す。


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「ほらほら、ここに寝るとあったかいんだよ~」とはしゃぐオーナー。一方、師匠は・・・(笑)

     パン焼き釜には、今朝もう一度火がくべられて、そのまわりでおばちゃんたちが忙しそうにしています。

     オーナーは嬉しそうに、パン焼き釜のこと説明してるんだけどねえ。師匠はそれを上の空で「ふんふん」と聞きながら、今朝のみん
     なの作業進行状況を手帳に記入するのに没頭してる。

     でもね、時々オーナーがこちらを向いて話しかけると、ささっとそっちを向いて、さもちゃんと聞いていたかのように返事をしたり、
     さも話に興味があるかのように、ちょっとした質問なんかもしちゃうんだよ。でも相手の答えなんて聞いてないんだけどね(笑)
     こういうとこ、やっぱりイタリア人らしい~037.gif

     このあともこういう師匠の言動を通して、私が10数年住んでいても今一歩つかめなくていつも困った、日本人とはちょっと違う
     イタリア人の考え方や物事の対処の仕方を、改めてへぇ~とかほぉ~とかおもしろく思うことになるのです。


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     パンがお釜に入りま~す。
     全粒粉が半分の生地を自然酵母でゆっくりゆっくり発酵させて膨らんだパン。お昼が楽しみ~♡


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     壁の前に戻ると、まだ漆喰を塗ってるところ。
     今日の範囲は広いからなあ。

     それにしてもこの人、本当に仕事がていねいだ。仕上がりの表面もすごく滑らかだし、フレスコ画用の塗り方をよく知ってるんだね。
     いい仕事を見ると、こっちもどんどんやる気がわいてくる~。

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     漆喰塗りが終わるのを待ちながら、右の方でやっている、師匠とそれを手伝うFrとCの様子をながめます。
     そういえば、師匠が描くところを見るのは初めてだなあ。

     師匠の説明を聞きながら、どうやって描いてるのか、筆はどういうものを使ってるのか、どういうところを注意するのか。ひとこと
     ひと言を聞き漏らさないように。テクニックを盗むいい機会。スパイ、スパイ004.gif
     一緒に描いたらすごい勉強になるだろうなあ。

     師匠は(たぶん普段は使うけど、今回は)ほとんどカルトーネも使わない。
     壁を見ながら、描くものを決めて、細かい色などをFrやCに指示していく。

      「描くものは、壁が教えてくれるんだよ。だから壁と対話しなくちゃいけないんだ」

     師匠がフレスコ画のことを話す時は、いつも表現がとても詩的でロマンチック。
     私はそれが、腑に落ちたような、よくわからないような・・・でも彼が言うことを、受け身でただ頭に刻んでいく。

     少しずつ、少しずつ、見ていてこちらが楽しくなる画面ができていきます。

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     彼らが描いているのを見ていたら、突然ふっと、目の前の霧が晴れたよう。

     そうか~。フレスコ画だって、いつもの絵のように描けばいいんだ。
     今はただ楽しんで描けばいいんだな。


     さっきまでの迷いがあとかたもなく消えました。
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by sakanatowani | 2015-11-17 09:24 | フレスコ画 affresco | Comments(6)
   だんだんのってきたぞ~(ポーランドにまたフレスコを描きに行く 2015・10)
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     待望のお昼ごはんで~す♪

     今日のメニューは、フェットゥチーネが入ったポルチーニのクリームスープ(だと思う。インスタントかもしれないけど美味しい)、
     ポークリブのグリルと茹でジャガイモにディルがぱらり、そしてミックスサラダ。
     飲み物は、イチゴとルバーブを煮たジュース。フレッシュなイチゴとさくらんぼもありました♡

     写真を見ると、缶ビールも写ってるなあ。
     どうやらみんなは、ビールを飲みながらの作業も始まったようです。私はアルコール・アレルギーなのでパスですが。


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午前のジョルナータとのつなぎ目も滑らかに。この人、仕事が本当に上手で正確!やっぱりプロってすごいなあ。

     さあ、午後のお仕事の始まりです。

     午後はこの上部右側を全部終える予定なので、頑張らないと~。

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     漆喰を塗ってもらっている間にまた辺りをふらふら。

     あ、今日はSが食べる時間も惜しんで作業の番なのね。
     自分の壁を見ながら、木陰での食事。気持ちよさそう~。


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     私の右手側にある壁では、ベテランふたりが修復作業を始めましたよ。

     実はこの絵、Gが数年前に描いたもの。でも他の絵と同様いたずら書きにあった上、もともとフレスコ画ではなくアクリル絵の具で
     描いたものだったので、『フレスコ画ラビリンス』の名にはちょっとふさわしくない。だから今回、師匠が描く壁として、描きかえ
     ることになったのです。
     でもGの作品を尊重したい師匠は、元の絵の一部を残して、自分の絵を組み合わせることにしたのだそう。
     だから描きかえるための、古い漆喰部分を叩き壊してはがす作業も、元の絵の作者Gとのコラボ。

     ベテランふたりが並んで作業してる後ろ姿。なんだかかわいい。実際は、ハンマーでがんがん叩き壊してるのですっごい音!

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     さあ、私も始めましょう。

     午前中に終えた左部分から、少し色をぼかして混ぜながら、右のほうへ塗っていきます。

     あ~、それにしてもうるさい。
     私のちょうど背中側で、イタリア人のふたりが作業しているのですが、もうず~~~~~~~っとケンカばかり。
     ひとりが筆を入れれば、もうひとりが「なんで?」と言ったり文句をつけたり。
     このふたり、歳の離れたいとこ同士ということで、イタリア人の親戚にありがち(いえ、マスト mustな)歯に衣着せぬ言い合いが、
     もうず~っと絶え間無く続いているのです。

     イタリア語がわかるだけにね~、もうなんでそんなことで言い合ってるんだか・・・って感じで聞こえてしまうわけです。
     イタリア人らしいなという懐かしさもちょっとだけ含む苦笑をしつつ、4年前にJが言っていた『モメント・ドーロ momento d’oro 
     (目の前の壁と自分だけの)至福の時
』とは程遠いな~と思いながらの午後となりました。

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     さて、今年はこの作業場近くに簡易トイレがつくられていたのですが、私はいつも数100mを歩いて母屋のトイレまで行ってました。
     理由は、この景色が見たいから。

     本当にね~、ここの景色、1日中だってずっと見ていたい。
     だからいつも作業場を出たら、立ち止まったり、横歩きしたり、写真を撮ったりしながらトイレまで(笑)

     ここね、このプロジェクトのほんの2週間前までは、芽吹き始めの草の香りがものすごかったんだって。
     その頃に来たかった~。

     「そういえばここ、前には航空写真を撮りにヘリコプターが来たんだよね」って4年前にも一緒にやったRと話してて、ついでに気に
     なってた、姿が見えない(前回はお料理を作ってくれてた)おばさんのこと聞いてみた。
     そしたらね、なんとあのヘリコプターが来た時の爆風で、あのおばさんが住んでたお隣の柵とかが吹き飛ばされちゃったんだって。
     それでそのあと、ここのオーナーSが「修理代は弁償するよ」ってことになったんだけど、その修理代をふっかけられたとかなんとかで、
     結局ケンカになっちゃって、それ以来お隣とのおつきあいはまったく無くなってしまったとか。確かオーナーの妹さん家族とかだったはずなのに。

     だからあの時やった森の散歩もあれ以来なし。あの土地もお隣さんの敷地だったから。

     ええ~!
     森の散歩、またできるかなって楽しみにしてたのに・・・残念。007.gif

     私には「夢のような素敵な場所〜♪」だけど、ここもご近所さんとのいざこざのある「現実の場所」なのね~。
     すっかりこの環境に浮かれてるけど、実際にここに住むっていうのはまた別の現実ってこと思い出す。

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     今回の壁の大きさは、縦200cm、横280cm。
     身長が低い私が上まで届くはずもなく、前回同様、どこからか使い古しの塗料かなんかの空きバケツを見つけてきて踏み台に。
     体重で潰さないように、注意深く縁に乗って・・・でも1、2日でたいてい割れてきます(汗)。

     うんうん、やっぱり絵を描くのは楽しいなあ。001.gif001.gif001.gif



     4年前は、版画でもイラストでも、名刺サイズ〜大きくてもA4ぐらいの小さな作品ばかりつくっていたし、その大きさが私が表現
     したいものにあっていた。
     でもこの数年、だんだん大きなものも描きたくなっていたんだよね。
     だから今回はこの大きさでも、躊躇なく気持ちよく描けるのかもしれない。

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     ときどき様子を見に来るメキシコ人のRには、「その黄色い三角は何? ナチョス?」とからかわれつつも、今日の作業分はおしまい~。

     う~ん、終日ちょっと迷いながらの作業だったけど、まあ、今の私はこんなもんでしょう。よしよし。と、いうことに。



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     最近建てたという家の横の小さな建物。
     「パン焼き小屋なんだよ。見においで」とオーナーSに誘われて行ってみる。


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     そこには手作りのレンガを積んだパン焼き釜。
     その熱で、煮物などもできるように、鍋などを置ける部分もついてます。

     「釜の上は暖かいから、ここで寝ると気持ちいいんだよ~」とオーナー。私たちに見せるのが、たまらなく嬉しそう。
     誘われて、Aが気持ちよさそうに寝転がっています。

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     「もうこの時間じゃお腹が空いてるだろう」
     と、マヨネーズたっぷりのポテトサラダを勧められます。
     ああ、ポーランド人、本当によく食べるなあ。

     ふと見ると、おおっ、キュウリのピクルス、オグルキ(Ogorki)だ~!041.gif

     ポーランドのには二種類あって、私のお気に入りはこの塩水に漬けて自然発酵させた方。独特の酸味が優しくて、ちょっと糠漬けに
     も似た味です。
     前回は、イタリアに戻ってから自分で作れることを知って、以来、アパートのベランダでポーランドのキュウリを栽培して、それを
     使ってつくってたんです~。ポーランド風ピクルス20132012

     今回はちゃんと味わって、本物の味を覚えていかなくちゃ。

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     「明日はいいものが食べられるからね」
     そういいながらオーナーSは、せっせと薪をパン焼き釜にくべています。

     こうやって釜の中で直接火を起こして、鉄製の扉と木製の蓋とで二重に閉めて一昼夜。翌日になったら中の灰を掻き出して、それか
     らパンを入れるのだそう。

     明日も食事が楽しみな一日になりそう〜!058.gif
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by sakanatowani | 2015-11-14 09:59 | フレスコ画 affresco | Comments(6)
   さあ、始めるぞ!(ポーランドにまたフレスコを描きに行く 2015・9)
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今日も青空~。私の中では、ポーランドらしい空ってこれ ♪

     6月16日(火) 作業2日目。今日もいいお天気。
     ここの景色が大好きな私には、もう絶好の仕事日和〜 041.gif



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職人さんたちは、もう日陰用のシートの屋根をつくってくれてました。

     今朝もホテルから、3台の車に分かれて9時には出発。
     現場に着くと、みんなわらわらと各自の持ち場へ。

     それぞれが、今日の作業の手順や予定が頭にあって、黙々、サクサクと動いてる。
     職人さんたちはもう、直射日光で壁が乾くのを防ぐために、日よけ用のシートで屋根を張ってくれてます。

     さあ、私も今日はぐんぐん作業を進めねば。


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壁に直接描く下書き、シノピア(sinopia)。フレスコ画の言葉は、基本的にイタリア語が共通語。

     まずは昨日壁に直接描いたシノピア(sinopia、下書き)を再度チェック。

     いまや屋根用のシートのための足場もあって、遠くからまっすぐ眺められないのが難だけど、曲線の感じや位置など、自分がいいなと
     思うところまで直しながら、自分なりのこの絵の感じ、世界(というと大げさだけど)を頭の中でつくっていきます。

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えへへ、よかった~、まだ新しいカルトーネが残ってた。作業が遅れると、材料も少なくなっちゃうんだよね。

     シノピアができたら、カルトーネ(cartone)の準備。

     カルトーネというのは、イタリア語では「厚紙」という意味ですが、フレスコ画用語では、漆喰の上にシノピアを写し取るための薄め
     の紙のことを言います。たいていは、写真のような大きな紙。場合によっては、ビニールシートなどを使う人も。

     まずはこの紙の一辺に棒をつけ、それを先に描いたシノピアの上において、わずかに透けて見えるシノピアを紙に鉛筆などで写してい
     きます。この時、カルトーネにつけた棒の位置を、壁自体にも印をつけておくことを忘れずに。
     そうしないと、あとで漆喰の上にシノピアを正確に写せなくなってしまいますから。

     一人でも作業しやすい大きさを考えて、画面を3分割して、3枚のカルトーネを作りました。

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なんだこの写真?! 壁にホースで水をかけてるとこを自分で撮ったらこんな(汗)

     カルトーネが用意できたら、まずはよ~く、よ~く、壁に水を染み込ませます。
     程よく湿り気を帯びた壁だと、その上から塗る漆喰がしっかりとくっつくのです。だからSは前日の帰りがけに、壁に水をかけていたわけです。

     ホースで少しずつ、水を何度も丁寧に。
     これにもコツがあって、ただザバザバとかけてるだけじゃ水が壁の表面をすべっていくだけで、壁にまで染み込まないんです。
     何事にも練習と経験が必要だなあ。

     作業プロセスの写真を撮ろうと思ったら、あらこんな↑ことに。
     記録写真を残しておきたいけど、考えてみたら自分の写真って、こうやって作業してると撮れないんですよね。
     だからSは今回、自分の作業場の前に三脚でカメラをセット。
     そうしておけばリモコンで、自分が作業してる後ろ姿だって撮れるわけ。なるほど~!


     みんなも着々と作業が進んでるよう。

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     それにしても、みんなそれぞれ描き方も、スタイルも違うもんだなあ。
     私はみんながふだんどんな絵を描いているのかを知らないので、それぞれの作業風景を見ながら、そこからどんな絵が出てくるのか
     ワクワクします。

     と同時に、初めてではないとはいえ、まだ2回目のフレスコ画。どんな風に画材を扱えば、自分が考えてるような雰囲気を出せるの
     かなあとも考えつつ、みんなの描き方を観察したり、ふだんの作品のことをおしゃべりしてみたり。
     そうやって、また辺りをふらふらしながらも、頭の中では、どんな風に作業を進めようかとフル回転。

     そういう私を見て、(壁の前でじっと壁と語り合うものだという)師匠は「壁に水はやったのか?たくさん、たくさん!だよ」「漆喰は
     もう頼んだのか?予約しておかないとすぐ来てくれないよ」と心配そう(笑)

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左側が4年前にも会った、いつもにこにこしてる親方。右側の人は初めて会ったけど、すごく丁寧な仕事ぶり。

     そうそう! この日から、ポーランド語でコミュニケーションをとろうと、トライ!
     4年前はそんな余裕もなく、ただ会った時に「ジンドブリィ~(こんにちは)」だけだったけど、今回はもうちょっとここの人たちと
     近づきたいなあと思って。

     といっても、
     「プシェプラッシャム(Przepraszam すみません)。イントナコ、プロシェ(intonaco, proszę 漆喰、お願い)」
     だけだけど 006.gif
     イントナコはイタリア語。でも(イタリア人の)師匠となんども仕事をしている職人の親方ならわかってくれるでしょう。ふふふ。


     漆喰以外の用事の時でも、他の仕事をしている職人さんたちのところに行って・・・

      さかな「プシェプラッシャム(Przepraszam すみません)。プロシェ~(proszę お願いします~)」
      (と同時に、さあっ、気持ちを込めて全身を使って、「来てくださ~い!」のパントマイム〜!)
      すると親方が、「⚪︎×△※?」

     もちろん意味はわかんないけど、たいていは「今これやってるから、終わったら行くよ。いいね?」だと思うので、

      さかな「タ~ク、タ~ク(はい、はい)!」(親指をあげて、GOODの合図)
      親方も「タ~ク」003.gif

     よし、会話成立!


     もし私の想像が違っていても、親方の方が私がわかりそうな言葉、「イントナコ(漆喰)?」とか言ってくれるので問題なし。
     それ以上込み入った話の時は、英語とポーランド語ができる通訳役Rに間に入ってもらえばいいしね。

     そんな感じで、この日から、漆喰を塗ってもらうことになりました。


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     湿った壁の上に漆喰を塗り、その漆喰が乾かないうちに水で溶いた顔料の粉で絵を描くのがフレスコ画技法。
     なので、まずはその日の作業分(ジョルナータ)を決めて、そこだけに漆喰を塗ります。

     私はこの日、画面の上半分を終えることにしました。
     でもね、ただ一面にどう筆を運んで色を塗ろうか考えがまとまらないし、途中で(大事な・笑)お昼ご飯もはさみたい。
     だから今日の仕事を2つに分けて、まずは午前中分だけ漆喰を塗ってもらうことに。(そして午後はまた新たに塗ってもらいます)

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ああ、雨降りっぽい~。自分の技術のなさがどういう結果になるか見られたのは良かったかも。

     さて、前回は自分でやった漆喰塗りですが、今回は本職の職人さんたちに塗ってもらうことにしました。
     という理由のひとつがこれ。

     写真をよく見ると、前回描いた絵の空の部分に、青い斜線のようなものが何本も見えるでしょう?
     これは、漆喰の表面をなめらかに塗れなかったから。
     漆喰の表面のザラついたところに、顔料の粉がたまってしまって濃く見えちゃうのです。まるで雨降りの絵みたい015.gif

     だから今回は漆喰塗りはプロにまかせて、その綺麗な表面に、自分の絵を描くことに集中しようと決めました。

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カルトーネを使って、漆喰に絵を写しているA。

     漆喰はシノピアの上に塗られているので、この時点ではシノピアは見えません。ここでさっき用意したカルトーネの登場です。
     カルトーネにつけた棒を、あらかじめつけておいた壁の印に合わせて・・・下書きの絵を、筆のお尻などでギュギュッと力を入れて
     なぞっていきます。
     そうすると、柔らかい漆喰の上に、下書きの線の凹みができて写せるというわけ。
     漆喰に凹みができない方法もありますが、私の今回の絵はシンプルなので、この方法をとりました。

     教会のフレスコ画なども近くで見ると、この下書きを写した線の凹みが見えることがありますよ。
     ご旅行などで、古いフレスコ画を観る機会があったら、一度近くで観てみてください。
     こういう凹みやジョルナータの境目が見えて、何百年も前に描かれたものが、一人の画家にこうやってひと作業ひと作業実際に描か
     れたものなんだと感じられて、ぐっと身近に活き活きと見えてくると思います 001.gif

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     さあ、ここでトラブルが。青がもうないのです。
     みんながいっせいに昨日使い始めて、青い顔料の粉がもうなくなってしまったのです。
     ええ~、青を使いたかったのに~。今からRが町まで買いに行ってくれるそうだけど、戻りは午後だって。

     そこから師匠とちょっと顔料の話になりました。
     色の三原色のうちのひとつ、シアンは壁に定着しないので、フレスコ画には向かないんだそう。

     顔料というのは色の粉。もともとは産地の違う土や鉱物から、今では化学合成されたものなどからできています。
     (粘料や定着剤など様々な要素がありますが)簡単に言うと、顔料を水に溶いたのがフレスコ、アラビアゴムでなら水彩絵の具、麻などの
     油で溶いたら油絵具、ワックスで溶いたらオイルパステル、膠液で溶いたら日本画絵具と、顔料は様々な絵画技法の絵具の大元になる色
     そのものです。

     それを水で溶いて、水分と漆喰内の物質および空気の化学反応でできるガラス質の中に顔料の粒を閉じ込めて定着させるのがフレスコ
     画技法の原理。絵具の歴史の出発点のようなテクニック。
     しかしその後、描きやすさだったり、色の定着や発色の仕方を向上させるためとか、持ち運びの便利さなどの理由から、だんだんと水彩
     絵の具、油絵具などの新しい画材や新しい色の絵具が生まれてきたわけです。
     だからその最もシンプルな技法であるフレスコ画の、水と漆喰だけでは取り込んで定着させられない色というものがあるというわけです。

     この技法の良さを生かすためにも、より豊かな表現をするためにも、顔料それぞれの色の勉強をしないとなあ。ひゃ~ 005.gif005.gif


     まあ、今はともかく描かなくては(汗)

     ということで、まだたくさんある黄土色っぽい黄色で始めることにしました。いや、まあ、たくさんあるからってだけじゃないけどね。
     筆跡をもっと残した方がいいかなあ・・・。でもある筆はこれだし・・・。
     う~ん、右の方は、別の色にだんだん変わっていく感じにしようかなあ。
     これでどうかなあ・・・でもこの方がいいかなあ・・・。

     迷いすぎ~。

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     「そろそろごはんですよ~」
     おおっ、ご飯の時間を知らせるトラクターがきましたよ。

     ちょうどいいや、このジョルナータ分は終わったし。ここで午前中の作業を終わって、ご飯を食べて気分を変えよう。
     そしたら午後には、もっといいアイディアが浮かぶかも~。

     そう思って、私はそそくさと壁の前を離れたのでした 037.gif
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by sakanatowani | 2015-11-11 10:27 | フレスコ画 affresco | Comments(6)
   待望の昼食のあと作業開始!(ポーランドにまたフレスコを描きに行く 2015・8)
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食事は毎回こんな風に、トラクターにひかれて運ばれてきます。

     6月15日(月) さて、プロジェクト1日目のお昼です。

     ポーランド人にとって、食べることってとても大事みたい。
     食べる時間も惜しんで絵を描きたい師匠は困った顔で「ここの(お手伝いの)職人は数時間おきに食事するから、仕事が全然はかどらない」
     って言うけど、食べることが好きで、食事の時間で気持ちや作業の切り替えをする私には、ちゃんと食事の時間があったほうが好都合。
     しかもここのポーランド料理、恋しかったの~016.gif

     さあ、食事だ、食事だ!

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     お料理してくれる近所の人たち、懐かしい~。とはいえ言葉が通じないので、私が一方的に思ってるんだけど。

     でも、今回も会えると思っていたおばさんがいない・・・どうしたんだろう。

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     まだ仕事が始まったばかりの初日だから、みんなもすぐ昼食のテーブルへ。
     仲良しAは、ちょうど漆喰を塗り始めるところだからと、初日から昼食抜きで作業らしい。

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     今日のメニューは、ピンク・ボルシチ、まん丸のメンチカツに付け合せのザワー・クラウトと茹でたジャガイモにディルがぱらり。
     飲み物は、イチゴを煮たジュース。

     ポーランド人は本当にたくさん食べる。私は半人前にしてもらったけど、これでお腹い~っぱい。
     ディルがたっぷりのポーランド料理は本当に美味しい。
     イチゴをこんな風に煮ただけのジュース、初めてだけど、砂糖が入ってないのだろう。すっきりしていてこれもとっても美味しいのだ。

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     しかも、こんなにたっぷりの食事の後には、デザートであり、午後のおやつ用にと、こんなテーブルが用意されちゃうんです。

     軽い軽いパウンドケーキに、今が季節のさくらんぼ、大きなウエハースには、さくらんぼのジャムか、自家製のりんごジャムをつけて。
     こんな大きなしかもプレーンなウエハース、ポーランドではよく食べるのかな。

     食いしん坊の私としては全部味見をしてみたいけど、それにはどんなに大きな胃袋をしていたらいいのやら。
     でも私には、この食事もここに来る大きな楽しみのひとつなのです:-)

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     さあ、そろそろ午後の作業に戻りましょうか。

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     お、Aは昼食も後回しで、黙々と漆喰塗りに励んでいます。

     邪魔しちゃ悪いからとこっそり行こうとしたら、Aが私に気づいて手招きしてる。
     「調子はどう?」
     「はじめ漆喰がちょっとゆるすぎたから調節してもらったんだけど・・・。それよりも、聞いて。職人さんたちったらね、私が女だか
     らって、はじめ漆喰塗りはさせないって。女だからできないと思ってるのよ033.gif
     ???
     ここの人たちは、こっちのやり方に合わせてくれる人たちだと思ったけど・・・。どうしたのかな。

     足場架けや漆喰塗りのお手伝いに呼んでいる職人さんたちとのコミュニケーションは、ポーランド語のみ。
     だから基本的には、師匠は片言のポーランド語単語で、あとは英語とポーランド語ができるRが通訳として間に入ってくれるわけである。
     Aが漆喰を塗りたかった時、たまたまRがいなかったのかなあ。

     確かに、本職としていつもフレスコ画をやっている人には、好みの漆喰の状態ややり方っていうのがあるに違いない。なのにその微妙な
     ニュアンスを、相手と共通の言葉がないまま伝えなくちゃいけないっていうのは難しい状況だよね。
     経験者はこの技法の長所も短所も知っている分、こういうところで大変なんだろうなあ。

     でもそれと同時に、彼女はフレスコ画家として母国オランダで仕事を始めてから今までに、何度も「女だから」という言葉にぶつかって
     きたんだろうな。だから今回も”また”って感じた部分もあるのかも。女性が仕事をしていればあったこともあるだろう「女だから」という
     壁。日本だけでなくオランダにもあるんだなあ。
     そんなことも想像しちゃったりして。

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すでに作品を仕上げて余裕のGと、「ちょっと休憩~」というAが、私のまっさらな壁を見に来ましたよ。「早く描きなさ〜い」

     とはいえAは、その後きちんと自分にいい状態を作り出し、今日の作業分も順調に進んで満足そう。

     さあ、そろそろ私も始めなくちゃね。
     簡単なスケッチを描いて、それに合わせた縦横の長さを、自分の壁に合わせて測って書いて・・・

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     下書き用の絵の具を用意したら、さあ、いよいよ始めましょう。

     私が持っている筆、気づきました?
     お習字用の筆なんです。
     これね、私物ではなく、実はGからのプレゼント。なんとダイ⚪︎ーのなんですって。どこで手に入れたのかしらね。ウクライナにもあるのかなあ。

     Gはダイ⚪︎ーが日本の会社だって知らないみたいだけど、「ここのは安くていいんだよ。でも毛が抜けてくるから、下書きにしか使わな
     いほうがいいよ」って。
     まさかポーランドで、ウクライナの人からダイ⚪︎ーの筆をもらうなんてね。人生、思いがけないことが起こるもんです(笑)

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右手にドリルを持ちつつ、彼の壁の前を横切る私を写そうと、左手でこっそりカメラのリモコン・シャッターを押すS。

     朝食の席で一気に仲良くなったAと、その隣の壁のS。

     Sは「もう20年も日本車に乗ってるけど、本物の日本人に会ったのは初めて」なんだって。
     「帰ったら僕の車に『日本人に初めて会ったよ』って報告するよ!」って。ははは。
     私もマルタ島の人に会うのは初めて。というより、マルタ島っていう国を、今までそんなに意識したことも実はなかったなあ。私こそ、
     マルタ島の人と会うなんて想像もしたことなかった!

     たまたま2人ともイタリア語を話すというのもあるけれど、話しているうちに、なんだか昔からの仲間みたいに盛り上がる。
     なんだろう。なんでこんなにすぐに打ち解けて、仲良くなれるんだろう。ほんとに不思議。
     会話らしい会話も、バカバカしい冗談でお腹を抱えて涙を流しながら笑い転げるのも何年ぶり?
     この写真の場所は、今後も度々この3人での馬鹿笑いが聞かれる場所となるのでした。

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     「とにかく壁と対話すること」「いつも壁の前にいるように」という師匠。
     こうやってふらふらしてる私を見て何も言わないけど、内心「また歩き回って013.gif」と思ってるんだろうなあ(汗)
     でも私、こうやっていろんなことを感じたほうが、いいものが描けるんですよ~。

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     午後の直射日光でよく見えませんが、とにかく1日目で、下書きまで終わりました♪
     今日はアイディアを練るだけで、実作業は明日からかなと思ってたから、今日の進行状況に満足、満足。

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     みんなもそろそろ店じまい。
     明日は朝一から描く作業を始めたい几帳面なSは、明日のために、たっぷり壁に水をかけています。

     フレスコ画は、水と漆喰の中の石灰分の化学反応で色素を定着させるテクニックなので、壁がいつも水分を含んでいることがとても大事。
     今までずっと乾いていた壁なので、表面に水を流しただけでは一晩で蒸発しきってしまいます。
     だからこうやってたっぷりたっぷり水をかけて壁の内部まで水分を染み込ませ、明日になっても壁がしっとり濡れている状態にしておくの
     です。

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     師匠は、勝手知ったるオーナーSの家の前のデッキチェアでのんびり。ほんと、マイペースな人だなあ。
     今年は思いがけなく(というか、師匠が知らない間に)呼ばれたアーティストが多かったので、師匠が描くスペースがないかも、とか。
     でも私は師匠の描くところが見てみたいなあ。

     こうやって、第1日目が終わっていきました。




     が、夕食の席で突然、FrとC、Aが「町に出てみよう」って話になったみたい。
     4年前は、1日の作業の後に出かける元気もなかったけど、今回の参加者はエネルギッシュだなあ。
     珍しく、「私もちょっとなら出てみようかな~」って気になったので私も参加。ここに来るのは2回目なのに、町をまだ見たことないしね。

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     ウッジの町は、アール・ヌーボー風の装飾のある建物が多くて、私が住んでいたイタリアのトリノに似た雰囲気。ちょっと懐かしい。
     でもいろんなところにストリートアートがあって、かっこいい現代の町でもある。
     みんなで「今度は町の中で描いてみたいよねえ」なんて話したり、Frからは盛んに”日本の漫画に見る(イタリア人男性から見ると不可解な)
     日本の恋する若者の感情”についての質問攻めにあったり(笑)

     町の目抜き通りをちょっと歩いて、夜10時半にはホテルに。
     今日も長い長い、でもとっても楽しい1日でした。







     
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by sakanatowani | 2015-11-08 15:40 | フレスコ画 affresco | Comments(4)