食事は毎回こんな風に、トラクターにひかれて運ばれてきます。 6月15日(月) さて、プロジェクト1日目のお昼です。 ポーランド人にとって、食べることってとても大事みたい。 食べる時間も惜しんで絵を描きたい師匠は困った顔で「ここの(お手伝いの)職人は数時間おきに食事するから、仕事が全然はかどらない」 って言うけど、食べることが好きで、食事の時間で気持ちや作業の切り替えをする私には、ちゃんと食事の時間があったほうが好都合。 しかもここのポーランド料理、恋しかったの~ さあ、食事だ、食事だ! お料理してくれる近所の人たち、懐かしい~。とはいえ言葉が通じないので、私が一方的に思ってるんだけど。 でも、今回も会えると思っていたおばさんがいない・・・どうしたんだろう。 まだ仕事が始まったばかりの初日だから、みんなもすぐ昼食のテーブルへ。 仲良しAは、ちょうど漆喰を塗り始めるところだからと、初日から昼食抜きで作業らしい。 今日のメニューは、ピンク・ボルシチ、まん丸のメンチカツに付け合せのザワー・クラウトと茹でたジャガイモにディルがぱらり。 飲み物は、イチゴを煮たジュース。 ポーランド人は本当にたくさん食べる。私は半人前にしてもらったけど、これでお腹い~っぱい。 ディルがたっぷりのポーランド料理は本当に美味しい。 イチゴをこんな風に煮ただけのジュース、初めてだけど、砂糖が入ってないのだろう。すっきりしていてこれもとっても美味しいのだ。 しかも、こんなにたっぷりの食事の後には、デザートであり、午後のおやつ用にと、こんなテーブルが用意されちゃうんです。 軽い軽いパウンドケーキに、今が季節のさくらんぼ、大きなウエハースには、さくらんぼのジャムか、自家製のりんごジャムをつけて。 こんな大きなしかもプレーンなウエハース、ポーランドではよく食べるのかな。 食いしん坊の私としては全部味見をしてみたいけど、それにはどんなに大きな胃袋をしていたらいいのやら。 でも私には、この食事もここに来る大きな楽しみのひとつなのです:-) さあ、そろそろ午後の作業に戻りましょうか。 お、Aは昼食も後回しで、黙々と漆喰塗りに励んでいます。 邪魔しちゃ悪いからとこっそり行こうとしたら、Aが私に気づいて手招きしてる。 「調子はどう?」 「はじめ漆喰がちょっとゆるすぎたから調節してもらったんだけど・・・。それよりも、聞いて。職人さんたちったらね、私が女だか らって、はじめ漆喰塗りはさせないって。女だからできないと思ってるのよ」 ??? ここの人たちは、こっちのやり方に合わせてくれる人たちだと思ったけど・・・。どうしたのかな。 足場架けや漆喰塗りのお手伝いに呼んでいる職人さんたちとのコミュニケーションは、ポーランド語のみ。 だから基本的には、師匠は片言のポーランド語単語で、あとは英語とポーランド語ができるRが通訳として間に入ってくれるわけである。 Aが漆喰を塗りたかった時、たまたまRがいなかったのかなあ。 確かに、本職としていつもフレスコ画をやっている人には、好みの漆喰の状態ややり方っていうのがあるに違いない。なのにその微妙な ニュアンスを、相手と共通の言葉がないまま伝えなくちゃいけないっていうのは難しい状況だよね。 経験者はこの技法の長所も短所も知っている分、こういうところで大変なんだろうなあ。 でもそれと同時に、彼女はフレスコ画家として母国オランダで仕事を始めてから今までに、何度も「女だから」という言葉にぶつかって きたんだろうな。だから今回も”また”って感じた部分もあるのかも。女性が仕事をしていればあったこともあるだろう「女だから」という 壁。日本だけでなくオランダにもあるんだなあ。 そんなことも想像しちゃったりして。 すでに作品を仕上げて余裕のGと、「ちょっと休憩~」というAが、私のまっさらな壁を見に来ましたよ。「早く描きなさ〜い」 とはいえAは、その後きちんと自分にいい状態を作り出し、今日の作業分も順調に進んで満足そう。 さあ、そろそろ私も始めなくちゃね。 簡単なスケッチを描いて、それに合わせた縦横の長さを、自分の壁に合わせて測って書いて・・・ 下書き用の絵の具を用意したら、さあ、いよいよ始めましょう。 私が持っている筆、気づきました? お習字用の筆なんです。 これね、私物ではなく、実はGからのプレゼント。なんとダイ⚪︎ーのなんですって。どこで手に入れたのかしらね。ウクライナにもあるのかなあ。 Gはダイ⚪︎ーが日本の会社だって知らないみたいだけど、「ここのは安くていいんだよ。でも毛が抜けてくるから、下書きにしか使わな いほうがいいよ」って。 まさかポーランドで、ウクライナの人からダイ⚪︎ーの筆をもらうなんてね。人生、思いがけないことが起こるもんです(笑) 右手にドリルを持ちつつ、彼の壁の前を横切る私を写そうと、左手でこっそりカメラのリモコン・シャッターを押すS。 朝食の席で一気に仲良くなったAと、その隣の壁のS。 Sは「もう20年も日本車に乗ってるけど、本物の日本人に会ったのは初めて」なんだって。 「帰ったら僕の車に『日本人に初めて会ったよ』って報告するよ!」って。ははは。 私もマルタ島の人に会うのは初めて。というより、マルタ島っていう国を、今までそんなに意識したことも実はなかったなあ。私こそ、 マルタ島の人と会うなんて想像もしたことなかった! たまたま2人ともイタリア語を話すというのもあるけれど、話しているうちに、なんだか昔からの仲間みたいに盛り上がる。 なんだろう。なんでこんなにすぐに打ち解けて、仲良くなれるんだろう。ほんとに不思議。 会話らしい会話も、バカバカしい冗談でお腹を抱えて涙を流しながら笑い転げるのも何年ぶり? この写真の場所は、今後も度々この3人での馬鹿笑いが聞かれる場所となるのでした。 「とにかく壁と対話すること」「いつも壁の前にいるように」という師匠。 こうやってふらふらしてる私を見て何も言わないけど、内心「また歩き回って」と思ってるんだろうなあ(汗) でも私、こうやっていろんなことを感じたほうが、いいものが描けるんですよ~。 午後の直射日光でよく見えませんが、とにかく1日目で、下書きまで終わりました♪ 今日はアイディアを練るだけで、実作業は明日からかなと思ってたから、今日の進行状況に満足、満足。 みんなもそろそろ店じまい。 明日は朝一から描く作業を始めたい几帳面なSは、明日のために、たっぷり壁に水をかけています。 フレスコ画は、水と漆喰の中の石灰分の化学反応で色素を定着させるテクニックなので、壁がいつも水分を含んでいることがとても大事。 今までずっと乾いていた壁なので、表面に水を流しただけでは一晩で蒸発しきってしまいます。 だからこうやってたっぷりたっぷり水をかけて壁の内部まで水分を染み込ませ、明日になっても壁がしっとり濡れている状態にしておくの です。 師匠は、勝手知ったるオーナーSの家の前のデッキチェアでのんびり。ほんと、マイペースな人だなあ。 今年は思いがけなく(というか、師匠が知らない間に)呼ばれたアーティストが多かったので、師匠が描くスペースがないかも、とか。 でも私は師匠の描くところが見てみたいなあ。 こうやって、第1日目が終わっていきました。 が、夕食の席で突然、FrとC、Aが「町に出てみよう」って話になったみたい。 4年前は、1日の作業の後に出かける元気もなかったけど、今回の参加者はエネルギッシュだなあ。 珍しく、「私もちょっとなら出てみようかな~」って気になったので私も参加。ここに来るのは2回目なのに、町をまだ見たことないしね。 ウッジの町は、アール・ヌーボー風の装飾のある建物が多くて、私が住んでいたイタリアのトリノに似た雰囲気。ちょっと懐かしい。 でもいろんなところにストリートアートがあって、かっこいい現代の町でもある。 みんなで「今度は町の中で描いてみたいよねえ」なんて話したり、Frからは盛んに”日本の漫画に見る(イタリア人男性から見ると不可解な) 日本の恋する若者の感情”についての質問攻めにあったり(笑) 町の目抜き通りをちょっと歩いて、夜10時半にはホテルに。 今日も長い長い、でもとっても楽しい1日でした。
by sakanatowani
| 2015-11-08 15:40
| フレスコ画 affresco
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