言葉のニュアンス
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     言葉って単純じゃない。
     ひとつひとつの言葉の組み立てってものじゃなくって、その文化や人の性格に、密接につながってるんだなあって、
     日頃から感じています。

     例えばね、イエスさまのお父さん、ヨセフさまは、大工さんだったって、通っていた幼稚園で聞いたと思うんです。
     でもね、こちらに来て数年して、ある日、ハッと気づいたの。005.gif
     ヨセフさまは木工職人だったんです。それを日本語では、木を扱う職人、したがって大工さんって訳したんですね。
     大工さんって、家を建てる人。
     でもイタリアでは、家は木で建てないんですよね~。
     だからもしかしたら、ヨセフさまの仕事、木工職人って、家具をつくる人ってことなんじゃない?!って。

     こんなふうに、ひとつの言葉を単純に訳しても、その文化によって訳も受ける印象も違うんですよね。
     だからニュアンスの違いにいたっては、本当に正確に伝えるって難しい~。

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     実は先日出版された私の絵本
     もちろん最初の案は日本語。私の頭の中でつくってるからね。
     そのときは、「(悪いけど)ちょっとつめてくれるかな?」って感じで書いたんです。
     だから売り込みのために英語に訳すときも、私の感覚で「ちょっとつめてくれる?」に近い感じで書きました。

     それを出版社の人が、自然な英語になおし、もちろんいい絵本になるようにプロの手も加えたのでしょう。
     そしてできたのが、『Move over, please!』。

     もちろんやっと出せた自分の第1冊目の絵本だし、プロの編集者の腕も信頼しています。
     でもね、題名の『Move over, please!』、私の頭の中では、「ちょっとつめて!015.gif」って訳しちゃう。
     何となく、「ちょっとつめてくれる?001.gif」とは違うんですよね。
     本の中の「Can you move over, please?」は、私の脳内訳でも「ちょっとつめてくれる?」って感じがするんですけどね。

     でもこれは、日本語が母国語の私の頭と気持ちが感じること。
     英語が母国語の人の感じるものとは、やっぱり違うと思うんですよ。

     英語圏の人は、私と同じ感じでこの題名を感じてるのかなあ。どんな感じなんだろう?
    それに この本は、他にドイツ語、フランス語、スペイン語、イタリア語、ロシア語、ギリシャ語、トルコ語版があるわけです。
     それぞれの言葉が母国語の人は、どんな感じに思うんだろう。
     バイリンガルの蒼いお山のかおりさんは、どんな感じでこの2つの題名を読みますか?

     言葉のニュアンスって、本当に些細なことだけど、でもとっても大事なもの。
     とってもちっちゃなことだけど、伝えられると嬉しいもの。
     いつかこの本も、日本語版が出せたらいいなあって思うんです。

     明日から3日間、この本を持って、ボローニャの世界絵本フェアに行ってきます。
     今回はまだ、この本が、私がちゃんと仕事として絵を描ける人だと信用してもらうための見本になってくれるだけ。
     それをいつか、日本の出版社から日本語で出せたらなあ。
     それがこれからの夢のひとつ。

     まあその前に、この絵本フェアで集まれる、久しぶりに会える友達に会えるのがすごく楽しみ。
     その人たちは、絵本業界ですでにイラストレーターとしてちゃんと長く働いている人たち。
     私の夢を実現できるように、2冊目の本が出せるように、みんながどう動いてるか見てこなくちゃね。

     みなさんも、すてきな1週間を!056.gif
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by sakanatowani | 2014-03-23 22:11 | 母国語、外国語 | Comments(13)
Commented by suzume-no-oyado at 2014-03-24 04:47
昔、"Can you pass me the salt, please"って言ったら、先生からCanはabilityを問う言葉だから、canはこの場合使わないのよって言われました。でも、「~くれる?」のニュアンスだとmayじゃないし、canに近い感覚なの分かります~。
そうか、ヨゼフは木工職人だったんだ。家を建てる大工さんじゃなかったんですね。文化に根差した翻訳って大事なんですね。
Commented by sakanatowani at 2014-03-24 05:36 x
すずめさん、こんばんわ〜♪
そうそう、can!日本語だと「私は英語を話せません」という時も、can'tじゃなくってdon'tなんですよねえ。
「くれる」「あげる」って、本当に日本語らしい言葉だなあと思います。そして他の言語には訳しにくい!「くれる」には「私のために、ありがとう」って意味が含まれるし、「あげる」「には「あなたのために自分の意志でします」みたいな意味も含むでしょう?そういうのって、すごく文化なんだなあって思います。
それと同様に、canはabilityっていうのも文化ですよね。
ヨゼフさま、イタリア語ではfalegnameなんですよ。辞書で調べてみたら、建具屋、指物師、家具職人、と。
私、ずっと大工さんって思ってたんですけど、あるときふと「あれ?でもイタリアでは木で家を建てないよなあ」って気がついて、彼は家具職人ってことだったの?と思った次第。
難しいですね、言葉って。だから興味深いんでしょうけど。
Commented by starofay at 2014-03-24 07:13
(悪いけれど)ちょっとつめてくれるかな?
Would you mind moving over a little bit?
Could you move over a little?
ニュアンス的にはこんな感じかな?
でも子供用の絵本なら短くシンプルにしたかった編集者の気持ちもわかるな。

そうか!イスラエルの家は石を積み立てて建てる感じだものね。
Commented by sakanatowani at 2014-03-24 12:53 x
かおりさん、おはよ〜♪
ああ、なるほど〜!
日本語と英語、両方のニュアンスを体感できるかおりさんのお墨付きなら安心!
絵本の文って、リズムも大切だと思うんですよ。だから各国語にする翻訳者さんも大変だろうなあと思います。
そうなのよ、イタリアの家・・・って考えて、イスラエルの家も石だろうなあって思って。
ず〜っとヨセフさまは大工さんだと思ってたけど、家具職人かもって思ってからは、ちょっとイメージが変わりました(笑)
Commented by Saori at 2014-03-27 18:38 x
こんにちは~
絵本フェアは如何でしたか?
たくさんの人がさかなさんの絵本の存在を知って、手に取ってくれるきっかけになったかなぁ、、、そうなったことを祈ってます^^
言葉のニュアンスって難しいですよね。
日本語→英語の直訳が必ずしも正しいとは限らないし。
OLしていたころ翻訳の勉強も2年ほどしていたことがあるんですが、英語→日本語にするときに先生から気を付けないといけない、と言われたのが、日本語として不自然な文章にならないように、と言う事でした。なのできっと日本語→英語でも英語が母国語の人が読んで不自然ではないような訳、にしないといけないんでしょうね。
でもそのニュアンスって、育った環境とか文化とか考え方がベースだから、やっぱり日本語が母国語の私には難しいです^^
Commented by sakanatowani at 2014-03-28 16:50 x
Saoriさん、おはようございます♪
絵本フェア、楽しんできましたよ〜。歩け歩けでぐったりでしたが(笑)
翻訳の勉強もされてたんですね。すごいなあ。
そうそう、ほんとに、「自然な」文にするって、訳してる時って、本当に難しいですよね。
私もいつも、日本語で考えて英語に訳すのですが、やっぱり英語には英語の自然な文体っていうのがあるから、英語に訳してから、またそこだけで修正してます。
が、もちろん私のへなちょこ英語なので、出版社には文の主旨がわかってもらえればいいかなという程度。そして出版社には、「自然な分に修正してくださいね」と言っています。
本当に、言葉を見れば見るほど、言葉って環境、文化、考え方と密接につながってるんだなあって思いますね〜。
でも、日本語から英語やイタリア語になおす時、主語が誰かわからなくって困る時がけっこうあるんですよね。私?私たち?一般的な人みんな?って。日本語も難し〜!(笑)
Commented by tantan_quelle at 2014-03-28 18:02
ベルリンは先週は20度前後まで気温が上がり公園はピクニックをする人達をたくさん見かけましたが今週に入り気温が下がってしまいました。そちらは暖かいままでしょうか?
本のタイトル、大切なことなのでさかなさんの引っかかる気持ちもよく分かります。ただ、英語ネイティブの人って日本人の感覚からするとビックリするくらいラフな話し方をするようなのでPleaseが付いているということは充分丁寧なのかも?!かおりさんも書いてられるようにタイトルなのでシンプルに短くしたかったのかもしれないですね。
今回の出版をキッカケに日本でも本が出ると良いですね☆

↓日本語やイタリア語のお話、色に関するお話もとても興味深く読ませて頂きました。
私も自分の髪や目の色が黒じゃないと知った時は衝撃でした。日本だと「茶髪」は染めている人ですからねー。あと、アメリカ人の友達が小学校の集合写真の中から友達を探すのに髪の色や目の色で探していたのも驚きでした。
「目」についてもコメントしようとしたら「長過ぎます」とエラーになったので、そちらはタイトル「目!」の所にコメントさせて頂きますね。
Commented by sakanatowani at 2014-03-29 16:24 x
tantanさん、おはようございます♪
本のタイトルのこと、気に入ってないとか、なんで?!とか思っているわけじゃないんですよ。
編集者がプロとして、この本をよくするためにそうしたのだと信頼してますから。
ただこのタイトルが、いわゆる私が習った「命令形」で、私の頭の中ではそんなふうに訳されたので、へ〜、母国語が違うって、こういうふうに感じ方も違うわねえと思ったということです。
Commented by organvita at 2014-04-08 06:18
ちょっとした小さなニュアンスの違いでも、色んな表現方法がありますよね~。特に日本語は本当に豊かだなと思います。(ほんと、私も母国語が日本語でよかった・・・!)細かいニュアンスが微妙ですよね。外国語に言い換えるとき、急に直接的になるな~って、違和感を感じることもあります。人に教える日本語って難しいですよね。私はとても日本語教えられませんよ!Yuukさん、すごい!ご本の出版おめでとうございます!!!!絵本フェアで素敵な出会いがあると良いですね!そして日本語でぜひいつか出版していただきたいです~!!!
Commented by sakanatowani at 2014-04-09 00:01 x
愛さん、こんにちは♪
そうそう、ほんと、日本語のあの語尾変化の微妙なニュアンス!
ああいうのって、他の言語の人も感じて使い分けてるのかなあって思いつつ、イタリア語に日本語のあのニュアンスをどうにか当てはめられないかって試行錯誤して暮らしてますが、難し〜。
外国語に言い換えると直接的っていうのは、私もけっこうそう感じます。で、「いや、こんなに直接的じゃ、相手にきつくとられるかも。いや、でも、こういう言い方の文化の人なんだから、こうじゃないとわかんないかも」なんて、グルグル考えたりして(笑)
あ、以前、ダンナさまが「薄い字」を書いたと書いていたでしょう?ダブル子音だからちっちゃい「つ」とか、自動的に当てはめるんじゃなくって、音の強弱に意識があるからじゃないかなあって。さすが音楽家だなあって。
相手の性格などによっても感覚が違うし、教えてると、逆に私が日本語を改めて知ることになって、おもしろいですよ。
絵本のこと、どうもありがとうございます。やっとです〜!
いつかいつか日本語でも!!
Commented by さぁこ at 2015-11-07 14:18 x
2015/10/22から2015/10/29までドイツの世界遺産を廻るツアーに夫とハネムーンとして行ってきました。
簡単な英語なら分かるので、ドイツ語の本を日本語でも出版されているものかドイツ語の本を英語でも出版されているものを探して自分のお土産にする予定でした。
最初は日本語で持っているはらぺこあおむしを買う予定だったのですが、ニュアンスがつまらなくてやめました。(英語版で懲りたのです。あの可愛らしい独特の日本語とは到底かけ離れた感じが可愛くなくて)
結局税関も通り抜け後は飛行機に乗って帰るだけとなったフランクフルト空港のルフトハンザ内免税ショップで諦めきれずに探していたところ、ショップ店員さんが付きっきりで探してくれたのがこちらの絵本でした。まさか日本語が母国語の方が作った絵本とは知らず、まさに私が探していたとおりの絵本に出会えた事に感動しています。ドイツ語は読めませんが、英語は読めるので、意味は分かり大人の私ですが楽しんでいます。是非日本語になった本が出ましたら購入したいと思います。
Commented by sakanatowani at 2015-11-08 14:42
さぁこさん、初めまして♪
えぇ〜!そんなところで買ってくださたんですか!!
気に入っていただけたようで、そしてそんなふうに書いてくださったこと、本当に嬉しいです。
本当の意味では「ドイツ土産」ではないようで申し訳ないのですが(笑)、でも、書店で買えるのはドイツだけでだと思うのでいいかな。ふふふ。
日本語版、早く出したいです〜。
それまでは、ときどきあのくまさんたちを眺めて楽しんでくださいね。
こんなふうにお知らせいただけて、本当に嬉しい♡ ありがとうございます!
Commented by さぁこ at 2017-05-13 14:45 x
こんにちは。
以前のコメントにお返事頂きありがとうございます!
最新日記のコメントではないのですが、あれから進展がありましてあえてこちらに書かせて頂きました。
今年2月6日に娘を出産しました。
まだ首も座らないのですが、私が本好きなのでまだ意味も分からないと知りつつゆきこさんの絵本も読み聞かせしてます。
いまだにドイツ語は読めず英語や勝手に訳して日本語で読んでいます。
ゆきこさんの仰っていた「ちょっとつめて!」ではなく「ちょっとつめてくれるかな?」でo(^-^)o
いつか娘を連れてまたドイツに行こうと夫と計画してるので、その時にはこの絵本をお供にしたいと思っています。
最近はニコニコしながらくまさんを見つめ、ガラガラの白いウサギさんと同じだねなんて話ながら見てくれてます。
本当に良い絵本をありがとうございます!
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