充填豆腐の要領で、すでに煮られたものが冷蔵パックで売られてるポレンタも。煮立てのポレンタの方がおいしいけど、手抜きしたい時は便利。 ポレンタは冷めると固まると前回書いたが、それをスライスして、ゴルゴンゾーラやトマトソースをかけてオーブンで焼くと、 ポレンタ本来の柔らかさと、オーブンで焼けたカリカリとした食感が両方味わえておいしい。 私はこっちの方が好きかもしれない。たぶん柔らかいポレンタを大量というのは、同じ食感が続くので飽きるというのも あるのだろう。 昔のシェアメイトは、翌日にオーブンで焼きポレンタをしたくって、ポレンタをつくるときはいつも多めにつくると 言っていたっけ。 このスライスしたポレンタを、そのまま、もしくはグリルしてセコンド・ピアットの付け合わせにするのは、北イタリア の東側に行くとよく出てくる。 だから私の中では、例えばヴェネツィアあたりのポレンタの食事というと、菱形に切られた付け合わせ、だったりする。 アメリカの南部では、グリッツという名前で、皮を剥いた白いトウモロコシの粉でつくるお粥があるという。 アメリカ南部の家庭料理のTasteSouthさんやLA MAISON DE MOINEAU~雀のお宿~のすずめさんが紹介してらっしゃいます。 これもアメリカ版ポレンタですね。 どんより冬色の空。こういう日が続くと、ポレンタの出番も多くなるんだろうな。 なるほどね~。北ヨーロッパのじゃがいも、北イタリアのポレンタ、アメリカ南部のグリッツと、昔はとにかくでんぷん質を 食べることが大切だったんだもんな~と思いながら見ていて、ふと気づいた。 これって、あの“とうもろこし粥”なんじゃない?! 子どものころから、物語の中の食べ物がすごく気になっていた。 見たことも行ったこともない場所で食べられている、知らない食べ物。 そんなものを読むたびに、「どんなものなのかな~。おいしいんだろうな~。いつか食べてみたいな~」と夢見ていた。 たぶん『トム・ソーヤーの冒険』とかだろう。 そういう物語の中で、「○○はそう言いながら、とうもろこし粥をすすりました」とかいう文があったのだ。 あれって、グリッツのことなんじゃないかなあ。 グリッツなんて日本にはないから、“とうもろこし粥”と訳されていたのだろう。 イタリア語版だったら、たぶんポレンタと訳されているんだろうな。 そういえば、“麦のおかゆ”というものもどこかで読んだことがあるような気がする。 あれはオートミールのことなんだろうなあ。昭和30、40年代以前の翻訳だったから、オートミールはまだメジャーな食べ物ではなかったのでしょう。 リコリスのグミは、細長いひも状でぐるぐる巻いていたり、蜘蛛などの形をしているものも。 そんなふうに、夢見ていた物語の中の見知らぬ食べ物のことに思いを馳せていたら、にがい思い出もよみがえってきた。 リコリス、である。 リコリスは日本語でいう甘草の仲間。その根のエキスを甘味料として、欧米ではお菓子がつくられる。 あの黒いグミだ。 私には薬っぽくて苦手な味のリコリスは、イタリアでも大人気。 あの黒い色をしたリコリス飴を棒として、そこにレモンシャーベットがついたものを、みんなおいしそうに食べている。 「リコリスのとこを食べたくて、シャーベットを食べ終えるのが待ち遠しい!」なんて言いながら。 しかし、ものすごく食いしん坊で、嫌いな食べ物はほとんどない私も、あの味だけはダメなのだ。 それがあの、子どものころ読んだ(記憶違いでなければ)ピーター・ラビットで、小ウサギたちをうっとりとさせる 食べ物だと知った時のショックは大きかった。 だって子どもの私も、「リコリスっておいしいんだろうな~。私も食べてみた~い♡」と、それはそれはうっとりと させられており、いろんな外国の食べ物が日本でも食べられるようになってからも、依然リコリスだけは謎の夢見る 食べ物、憧れのほんわりとした夢をまとった食べ物だったのだから(笑) 卵を泡立ててないからふわっとしてない私のケーキ。でも、ポレンタの粒がプチプチしておいしいのだ。 話はだいぶそれてしまったが、所変われば主食も変わる。 異国に住んでいると、昔々に読んだ未知の食べ物が、こうやって発見できることもあるのだね。 本の中と現実の世界のこういうつながりが、毎日の生活をちょっとおもしろくしてくれる。 最後に、私の好きなポレンタを使ったケーキを紹介させてください。 それは、北イタリア自然派生活のolivolivoさんのポレンタのヨーグルトケーキ 。 めんどくさがりの私は、別立てどころか、共立て、でもなく、卵をグルグルとかき回すだけという荒技でつくって しまうのですが(汗)olivolivoさん、ごめんなさい~、とってもおいしくて、もう結構何度もつくってます。 そうそう、ポレンタ(の粒)は、スクラブとしても使えるそうですよ。友人がこちらのエステティシャンから教えてもらったそう。 あ、ただし、プレコット(3分ぐらい煮るだけでできるタイプ)ではないものでね。 乳液などに生のポレンタの粒をそのまま入れて、顔を優しくマッサージするだけ。 そういえば、イタリアの市場では、とうもろこしを見ない。 粒コーンの缶詰は種類は少なくとも見るけどね。 以前知り合いに「なんで?」って聞いたら、「とうもろこしは家畜の飼料だから」って言われたなあ。 でも北部では、ポレンタになって食べられているんだね。 一冬に1度ぐらい「ポレンタを食べようかな」と思うことがある。 この冬はもう食べてしまった。だからもう次の冬までその気になることはないんだろうなあと思う。 私とは、そんな素っ気ない関係のポレンタだけど、これだけのことを考えさせてくれるというのは、おもしろい食材 なんだなあとも思うのです。
by sakanatowani
| 2014-01-29 22:37
| ごはん food
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