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   旅の終わりと始まり(ポーランドにフレスコ画を描きに行く19)
     2011年5月16日(月)

     ワルシャワのイヴォーナの家で目が覚めた。窓から見える空が青い。
     今日はいいお天気のよう。

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     イヴォーナの家の庭は、自然の林をそのまま生かしたもの。
     そんなに広いわけではないけれど、広い林の中にいるような気持ちになる気持ちがいい場所。
     ところどころにイヴォーナの陶芸作品が置いてあって、それがいちいちユーモラスでふっと笑ってしまう。

     居間と寝室などプライベートスペースをしきる狭い廊下には、「みんなには内緒なの」という彼女のアート・
     コレクションが並ぶ。
     2階は彼女のアトリエ兼事務所。
    「私はアーティストではないの」という彼女だけど、立派にアーティストであり、それがそこここに見られるお家。

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     午前中に行ったのはスーパーマーケット。
     スーパーマーケットはその国の生活を垣間見るのに最適な場所。大好き。
     それにね、ポーランドの食品も買いたかったのだ。

     翌日に次なるアート・プロジェクトの旅を控え、今日は1日本職の不動産業を部下とかたずけねばならない
     というイヴォーナ。
     なので彼女の娘さんに案内してもらう。

     車での道々、市場も見えて、「次に来た時は市場にも行きたいなあ」なんて考える。
     見ていると、外国資本のメーカー、スーパーがいっぱいで、どう考えても私が住むイタリアの街よりも
     欲しい物がすぐ手に入りそうだ。

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赤い箱は、チョコがけのマシュマロ。オープニングでもたくさん出されたお菓子。

     私たちはポーランド資本のスーパーに。
     野菜コーナーにはしょうがや大根がふつうに並んでいて、ふだんそれらを恋しく思ってるから、
     思わず買って帰りたくなる。

     ポーランドらしさが見えるのは、やっぱりお菓子のコーナーかな。
     イタリアと同様、パンの対面販売のコーナーの横に、焼き菓子が並んでいて、その顔ぶれが
     やっぱりイタリアとは違う。
     ウッジのホテルで食べたようなお菓子がずらり。

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インスタントでもその国の味が楽しめるのは、やっぱりワクワク。

     そして私はインスタント食品のコーナーへ。
     私は旅行に行くと、インスタント食品を自分や友人へのお土産に買うことが多い。
     インターナショナルに展開しているメーカーの物でも、その国によって扱っているメニューが違うのだ。

     私のポーランドのメニューでいちばん印象的だったのは、やっぱりスープ
     日本でもイタリアでも見ないスープを選んでカゴへ。
     きゅうりのスープ、卵のスープ。ここではふつうの味でも、私には特別な思い出の味だ。

     そしてスパイス。ジンジャー・パウダーを買う私を見て、娘さんがびっくりする。
     だってイタリア(の私が住む街)では身近に手に入らないんだもの。

     お昼にちょっと家に戻り、イヴォーナにスーパーで買ったものを見せながら、
     また一緒に何かできたらいいねと話す。
     2階のイヴォーナのスタジオに置いてある作品はどれも興味深く、作品を創り続ける生き方を考える。

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     ここでイヴォーナとはお別れ。
     午後は再び彼女の娘さんにワルシャワを案内してもらう。

     とは言っても、突然のワルシャワ観光に、どこに行くかも考えていないし、第一何があるかも知らない状態。
     ワルシャワの中心の広場に行き、結局あるギャラリーに入り浸ってしまった。
     アーティストの娘さんだから、こういうことは慣れているだろうけど、結局こういう場所にしか
     ひかれないなんて我ながらつまらないなあなんて、自虐的に思う^^;

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     夕方、ワルシャワの空港まで送ってもらい、ここでさよなら。
     ひとりで飛行機を待ちながら、ここにはまた来るような気がするような、でもそうでないような、
     複雑な気持ちで空港も売店をまわる。

     夜8時20分のフライトで、ミラノには22時25分着。
     たった2時間弱のフライトだ。
     EU(シェンゲン)圏内だからか、通関もイミグレもなし。
     まるで電車かバスみたいだ。

     ここからトリノまでのバスは夜中の12時発。1時間半の待ち時間。
     空港建物から出て、バス停のあるコンクリートの柱に囲まれたところのベンチに腰をかける。

     帰ってきちゃったんだなあ。

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     自分が自分でいられること、自分が自分としてみんなに受け入れられることが、本当に幸せだと感じた
     8日間だった。
     この7年間で何度あったか、いや、もしかしたら初めてかもしれない気持ち。

     まだまだ待ち時間があるから、バックパックにもたれて寝ちゃおっかな〜なんて思う。
     でも、夜中の空港の外でバスを1時間半待ちながら、寝ちゃおうっかな〜なんて思っていられるのは、
     自分が知っているところ、うちに帰るからなんだな。知らない国だったら、もっと緊張してるはず、と気づく。
     やっぱりなんだかんだ言っても、今の家が私のうちでもあるんだなあ。

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     道路の向かう側では、どこかから空港に来たバス、どこかへ行く長距離バスに、乗る人、降りる人、
     荷物をおろす人、いろいろな人が動いている。
     そのバスの運転手と空港の人が、仕事の合間の世間話をしている。イタリア語だ。

     そういえば、今回のポーランドでは、英語が思いがけなくすらすら出てきた。
     イタリアでは、いくら英語を話そうと思っても、口からはついイタリア語の方が出てきてしまう状態だったのに。
     この時点でも頭の中は英語バージョン 何か考えると英語が先に出てくる だけど、まわりの人のイタリア語がふつうに
     わかるのは不思議な感じ。
     明日美大に行ったら、イタリア語が出てこなくて苦労するかも。
     そんなことを考える。

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     今回の旅では、ポーランド語を覚えるということろまでは気持ちの余裕がなく、ジンドブレ(こんにちは)、
     ターク(はい)、ヂンクイエ(ありがとう)、ヂンクイエ ヴァルツォ(どうもありがとう)が口から
     出てくるようになったころには、プロジェクトは終わってしまった。

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     オープニング前にイヴォーナが、もうひとりのポーランド人アーティストと「ポーランド人はロマンチック、
     メキシコ人は力強い、日本人は繊細」とそれぞれのスタイルを評価したのに、へ〜と思った。
     そういう違った人たちと、同じ目的、創作への同じ気持ちで接することができた8日間。

     自分がいろいろなことができるって、久しぶりに思い出した8日間だった。
     フレスコ画をやり遂げて、こんな旅ができて、いろいろな人と、本当に心から触れあった8日間だった。

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     ふと、「家に帰るから安心してるけど、でもその家の場所は、私が変えられるんだな」という考えが頭を
     よぎって、思わず笑いが込み上げてきた。
     ああ、私にはまだ力が残っていた。もしかしたらこの旅で、また力が戻ってきたのかもしれない。

     もう何年も逆境に負けないように頑張りに頑張ってきて、力を使い果たしてしまった気持ちでいた。
     真上から強い風が吹く、ほぼ垂直の崖から落ちないように必死でつかまっていた。
     でも今、そこからふと横を見ると、遠くに緑深いのんびりした気持ちよさそうな場所があるってわかった気持ち。

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     翌日学校に、スタンにもらった木彫りの悪魔を持って行った。ポーランドのある町の伝統工芸品なんだって。

     学校に行ってみたら、なんだかふつうにイタリア語も話せてて、またそれも自分で不思議だった。

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     このポーランド記は、実はミラノの空港で何年ぶりかでそれまでゾンビのような生活をしていた私に戻ってきたこの気持ち、
     活力を書き記しておきたくて書き始めました。
     あれから1年。
     私はずっと無我夢中で何かと戦ってきて、まだあの時思い描いたような場所には行かれずにいます。
     でもやっと最近、少し息ができるようになってきたかな。

     「やりたい」「でも無理かも」「難しいんだよ」「でもやりたいんだよ」
     迷いながらの創作生活だったけど、やっぱりこれ、これしか私にはできないんだなと実感したのは、
     この旅行からの気がします。
     自分がひとつのプロジェクトをやり遂げてみて。また、他に創作活動をさまざまな形で続けている人たちを見て。

     これからもっともっと創ることと密接した生活をつくっていきたい。
     そんな風に思っています。

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     長い長い、果てしなく終わりのないようなこのポーランド記を、ずっと読んでくださった方、
     どうもありがとうございました。
     これからも、こういうアート・プロジェクトのことを書けるようにしていきたいです(あ、でももっと簡潔にね^^;)

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by sakanatowani | 2012-06-14 21:19 | フレスコ画 affresco
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