竹の子と銀杏
     3年ほど前、通っている美大で解剖学の授業が終わって帰ろうとしたら、自然科学イラスト(要するに、
     図鑑などに用いられているタイプのイラストです)の授業のプロジェクトの打ち合わせに来ていた知り合いに
     呼び止められた。
     北イタリア竹アソシエーション(だったかな?)が、『竹』についての本の出版を、この授業をとっている
     生徒とコラボをする計画がある。だから(この美大で当時)唯一の日本人の私は参加すべきだというのだ。
     日本は竹の文化を持っているのだから。

     それにのったのが、解剖学と自然科学イラストの授業を持つB教授。
     私はこの授業をとっていなかったので、このプロジェクトに参加しても、単位にもならないし、時間もくうし、
     なによりもそんな絵には興味がないので断った。
     断固として断った!が、B教授に押し切られ、嫌々ながら、竹細工を器として使った、竹の子料理を含む
     日本料理の絵を適当に描いて提出した。だが絵は気に入られたようだった。
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     その年、私は解剖学の試験をパスするべく、夏の3か月間、毎日8時間、解剖学の勉強だけをして、
     9月期の試験に望んだ。
     が、しかし、このB教授は試験日の数日前に突如、試験日を1日前にずらしたのだ。
     夏休み中だったので、その変更を知る生徒はおらず、試験当日、B教授はひとりで待ちぼうけ。
     翌日、これが正規の試験日だと信じていた生徒たちが来た時には、もうB教授の機嫌は最悪である。
     何人かの生徒にその日に試験を受ける許可を与えない始末。
     粘りに粘ったものの、私も試験を受けられないことに・・・夏の3か月の勉強がパーである。
     イタリア語での解剖学なんて、その勉強から少し離れたらすぐ忘れてしまうのだ。やり直すならもう一度、3か月の勉強しかない。
      もちろん私はその試験をいまだに受けていない。やる気は失せました^^;

     日本人だからという理由だけで無理矢理プロジェクトに参加させられ、他のメンバーは授業単位をもらったのに、
     私は何もなく、今度は3か月の勉強が無駄に・・・踏んだり蹴ったりである。

     このB教授の苗字、直訳すると「素晴らしく陽気な」さんである。が、実際のところはかなりの曲者である。


     さあそして今年、ずっと避けてきたB教授の自然科学イラストの授業をとらなくてはいけなくなった。
     しかも、今授業をとったらふつうは6月以降に試験を受けるのだが、私は事情があって2月に試験を
     受けなくてはならない。
     う〜む、仕方がない。『竹』の本にも参加したんですよ〜(だから試験を受けられるぐらい、もうずいぶん
     描けますよ〜)ってアピールしてみるか。
     イタリア人ならこんなの朝飯前。ここは、口八丁でなんでも可能になる国なのだ。

     今期の授業内容の説明の日、静かに正攻法でアタック!・・・失敗。
     うんとは言わない。曲者め。
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     先週の自然科学イラストの授業の初日は、授業をとれるかどうかの選抜実技テストだった。
     銀杏の葉とブナの葉を、実物を見ながら精密に描くのだ。
     銀杏はイタリアにはあまりない樹のよう。
     B教授、銀杏の起源や葉の効能、そして実がとても臭いことなどを、嬉しそうに話している。

     適当に描いたとはいえ、以前に提出した『竹』の本用の和食の絵は、教授には気に入られたようだった。
     だからここで落とされることはないだろう。しかし2月の試験(希望)のこともある。丁寧に描くに
     越したことはない。

     さあできた。提出〜。
     B教授、「おおっ、いいね!」と言って、虫眼鏡を手に、絵に見入っている。
     そうでしょ、そうでしょ。丁寧に描きましたから。

     教授「ああ、君は・・・」
     さかな「ええ、『竹』の本でもご一緒しましたよね」再アピール!
     教授「あの料理の絵は、とてもよかったよ。君たちは、竹を食べるんだよね」
     さかな「(正確には竹の子なんだけどね。以前説明しましたよね)ええ、そうです^^。
         実は銀杏の実も食べるんですよ〜」なんとか仲良しになって、あわよくば2月に試験を〜
     教授「むう」
     そしてすぐに私の絵に顔を向け、「いいね」とつぶやき、この絵をどの棚にしまうかを指示する教授。
     あれ、話し弾まず。むむむ、もしかしたら、自分が知らないことを私が言ったのが、お気に触った?

     その上、教授の反応および、他人の話しにはあまり話しに突っ込んでいかない性格から推測するに、
     銀杏は臭いまま食べると思っている気がする・・・
     違うよ〜。中の核だけを取り出してね、それを煎ってね・・・。
     でもここで無理に話しを続けて、この変わり者の気を損ねてもいけない。2月の試験が・・・
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     う〜む、相手の生活にないものを、言葉少なにすぐにきちんとわかってもらうって、難しい。
     2月の試験という下心からの仲良し作戦も、特に進展は見られない。
     またしても、さかなのイタリア人的アピール、失敗に終わる。
     まだまだ修行が足りないね。さかなのイタリア人度、まだまだ0%である。

     こうやって、2月の試験を諦めないさかなと、日本人はあの臭い銀杏の実をうまく調理して食べるんだろう
     という間違ったインプットをしたB教授の静かな攻防戦は、まだまだ続く・・・。
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by sakanatowani | 2011-11-16 17:07 | ひびのこと diary
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