先日書いた同居人探しの大騒ぎ。イタリアに住んでいると、こういうことは日常茶飯事です。
あっちでもこっちでも大騒ぎ。 本当に、なんで穏やかにことを済ませられないのかなというほど、ここではいろんなことが大ごとに なっていきます。 だから今回のこともそんな風に「は〜、終わった〜♪同居人Rとの感じ方の違いがおもしろかったな」って 感じで書いたんです。 でも翌日ぐらいから、「もしかしたら、ここの生活を知らない人には、これは別の意味で取られちゃうかな」 って思い始めました。だって、それぞれのことが「激しい」から^^; よくイタリア人のことを、「おしゃべり好きで、抜け目なく、狡猾で、小さなことは気にしない、嘘も平気で 言う、そういう人間らしい人たち」と描写されているのを目にします。 これを「人間らしさ」と思うかどうかは人それぞれだと思いますが、こういう人たちの大騒ぎを外から見て、 うまく分かりやすくまとめたのが、イタリアの喜劇オペラなどなのだと思います。 それを実生活版にして、その中から見たら・・・私の先日の体験になるのでしょう。 ええ、本当に、彼らはたしかにおしゃべり好きで、抜け目なく、狡猾で、小さなことは気にしない、嘘も平気で 言う人たちです。 こっちで嫌なめにあって大声で愚痴を叫んでる人が、あっちでは逆に原因となって愚痴を叫ばれる側になる。 大騒ぎをしても、終わったらそれでおしまい、けろっと忘れちゃう。そしてまた新たな大騒ぎ。 ここの人たちはそうやって毎日を生きているのだなあと、見ていて思います。 思ったら、感じたら、すぐそれを口にして表現する。攻撃される前に言い倒す。難癖つけられてものらりくらりと 口八丁でするりとかわす。でもそれが身内のこととなったら、どんな手を使ってでも身内を守る。 それがここの文化です。 一方、日本はと言えば、自分の感情を大っぴらに表現するのは控える。我慢する。なるべく争い事が起こらない ようなやり方を選ぼうとする。言葉を使うより、相手の思っていることを推測して、こちらの行動を決めるなど、 私には、感情表現という面において、イタリアとの対極にある文化のような気がよくします。 どちらがいい悪いのでもなく、どちらが常識的、非常識でもなく、それぞれがただ、そういう文化、 なんですよね。 言葉の違いなんて些細なこと。意外に大きな違いを生むのは文化の違いから。 でもそれは、異文化にどっぷり浸かってもみくちゃにされながら、次第にそれが文化の違いというものなんだと わかるもんだなあと、この数年になってやっとわかった気がします。 以前フィレンツェで、南イタリア出身の女の子と住んでいた時、彼女と「道路の向こう側に、偶然友人を 見つけたらどうするか」という話になりました。 私は「向こうが気がついたら、『あ!』とかいって、お互いに手をふるのかなあ」っていうと、彼女は 「それだけ?!」って。 彼女の町でそれをやったら、それは「私はあなたをもう友達とも思ってない」って意味にとられちゃうって 言うんです。 友達なら、「道を渡って相手のところに行き、ハグとキスをして、『どう?元気?最近どう?』って話を ひとしきりするものだ。挨拶だけなら嫌なヤツにでもするもの。それはこちらが礼儀知らずにならないため なんだから」と。 それを聞いて、なるほどなあ、人との関係がはっきりしていて即行動なんだなあと思いました。 もちろん日本人だって、こういう密な関係の相手もいますよね。でも全員じゃない。だって、自分だって、 相手だって、どこかに行こうとしているところなんだもの。その場で話すんじゃなく、あとで電話やメールで 「今日は偶然だったね!」と言うのでしょう。 彼女の言い分を聞いて同時に、それじゃあ、どこに行くにも(誰か知り合いにばったり会うだろうから) 約束通りの時間に着けるはずないなって、イタリア人の時間の約束を守らない理由はこれかと、 にやりと納得してしまったりもしたのです。 私も知らないうちに相手に「あの子挨拶しかしない。感じ悪い」と思われてるかもしれません。 でもこんなことも、じっくり話をできる相手と話せたからこそわかったわけで、そのシチュエーションで 異文化の人がどう感じるかなんて、想像もできないことも多いんですよね。もちろん向こうも、こっちがどう 感じるかなんて想像もできないでしょう。それに相手はこっちの感じ方なんて気にもしてないでしょうし。 だって、何か感じたら言うのが当たり前の文化なのですから、黙っていたら感じていないと思われがちです。 またイタリアは、北と南の人の性格がかなり違う土地でもあるので、そういう国内の文化の違いもある わけです。一般に、南の人の方が情熱的、北の人の方が淡白といいます。 私が住んでいるところの人を他の土地の人は「冷たい」といいます。つまりより淡白なんでしょうね。 その上、当然、個人差もあるわけですし。 今住んでいる町である日、道の向こうにクラスメートの中でもよく話す子を見つけて、フィレンツェの元同居人の 女の子の言葉を思い出し、挨拶をしようと道を渡り始めたら、相手に明かに「困ったな」って顔をされて、 「ああ、この子は道の向こうで手をふった方がいい子なんだ」って、あちゃ〜ってなったことがあります。 この子にはしばらく「うっとうしい子」というレッテルを張られてしまったらしく、避けられました^^; もちろんイタリア人にも、相手の言い分をよく聞く人、相手の都合を考える人、相手の気持ちを考えようという 人もいます。私が日本人の考え方を伝えて初めて、そういう考え方もあるのだと知り、私に対しては、 私の考え方を尊重して接してくれる人ももちろんいます。 そういう人たちと話すことが多くなるのも自然なことでしょう。私は激しい感情表現にさらされていると 疲れてしまうのですから。 異文化を理解するのって、本当に難しい。相手にあわせていればいいってものでもない。自分が疲れて空回り するだけだから。自分がどう感じているかもわかってもらう努力も必要。 結局は、自分が心地いい状態を作れるかどうかが大事で、その違いをおもしろがっていないと暮らしていけない。 もし面白がれなくなってしまったら、違いを憎むようになってしまったら、もうそれは潮時。(出ていけるもの なら)その場を離れるしかないのだなと思うようになりました。 この日曜日に来た新しい同居人Dと話していて、私が話している内容と違うようにとられているのが見受けられ ます。相手の考え方のベースが違うから、そうなってしまうんですね。 相手の頭の中にないことをわかってもらうのは至難の技です。 さっきも、いろんな文化に興味のあるこのDに、プランターで育てている紫蘇を見せました。彼女は匂いをかいで 「あ、これはレモンバームね!」って。だから「違うよ。これは日本固有のハーブだよ」って言ったら、 「ここにはないの?!そんなものがあるはずがないわ!」って。 ここではよくある反応です。彼女に悪気は決してない。ものの説明でさえこうなんだから、それが考え方 だったら、もっともっと難しい。 そして、今日の午後、実はもうひとりの同居人を決めるため、今度はRとDと私の3人で、たくさんの人に会って、 いろいろ話しました。 2人がいいなと言ったのは、私には「この人と大丈夫かな?」と思った人。他の人も、3人の意見が分かれました。 そこでみんなで投票。1番人気だったのは、2人がいいなと言って私が?だった人。 「じゃあその子に決めようよ」と私が言った時に、他の2人は、「え?!そう決めちゃうの?本当にさかなは その子でいいの?もしさかなが嫌なら、投票でこうなっても、他の子を決めた方がいいと思う」って。 それで他のひとりに私がどう感じたかを一生懸命話し、ふたりの意見を聞いて、本当にたくさん話し合いました。 彼らが二の足を踏んだのは、もしあとでうまく行かなかったら、いいと言った彼らが責任を感じるしっていうのも あるよう。でも私がふだん蔑視されている感じとともに生活しているので、その感じが本当だったらと、彼らは 心配してくれたのです。もちろん私の感じすぎということもあるし、私もその人が本当に嫌な人だとは決められ ない。私だって長年の体験から、自分が卑屈になっているなと感じてもいるし。 ともかく、彼らは私の気持ちも尊重して、ちゃんと話し合おうと言ってくれたのです。それがとても嬉しかった。 こんなふうに他の2人と話せたのは、本当によかったなと思います。 結局、話しに話し合って、その子に決めました。 私はその子といい関係を築いていこうとポジティブに感じています。一方、初めにいいって言った2人は そう決めたとたん、本当に正しい選択だったか不安になってるんだって。 そんなものかもね。 さあ、新しい相手とどういうふうにいい関係をつくっていくか。 新しい課題です。
by sakanatowani
| 2011-10-07 06:01
| ひびのこと diary
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